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2023年12月 5日

【ブック&コラム】『中流危機』

「失われた40年」は避けられるのか?

c2310_3.jpg著者・NHKスペシャル取材班
講談社、定価1012円(税込)


 30年に及ぶ日本の中流崩壊の真相を追う1冊。勤労層への調査から全体傾向を俯瞰したうえで、個別取材を重ねて肉声を拾い、実態を生々しく描写する。

 頑張れば給料が上がった親世代には、結婚し、家を構え、車を所有し、子どもを育てるという「手の届く夢」があったのに対し、今は「夢すら見られない」のではないかと問題視する。続けてある地方製造業への取材では、50年続いたお得意先から部品発注を絶たれ、賃下げと非正規化に追い詰められていく苦悩も捉える。また、社会構造の視点からは、1995年の「雇用ポートフォリオ」の提言、その後の規制緩和と労働市場自由化、さらに正社員クラブと化した組合の立ち位置につき、キーマンたちへ接触を試みながら考察。雇用・賃金・人材育成・福利厚生を誰がどこまで責任を持つべきなのかと思考を巡らす先に「キャリアは誰のものなのか」と問いかける。

 転じて「中流再生の処方」では、デジタルイノベーションへの脱皮、リスキリングの推進、同一労働同一賃金による働き方の転換に希望をつなげている。


(久島豊樹/HRM Magazine より)

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