『5E』で拓く実践型リーダーシップ論
著者・ポール デュプイ 訳・呉亜矢
大和書房、定価1760円(税込)
1990年、大阪市西成区の公園ベンチに1人のカナダ人青年が現れた。初来日から30年余り、著者は日本をはじめ、シンガポールやインドなど世界を股にかけるビジネスマンとして活躍し、現在、世界最大の総合人材サービス・ランスタッドの日本法人で会長兼CEOを務める。その豊かな体験と視点から導き出した「実践型リーダーシップ論」が本書に詰め込まれている。
偉大なリーダーにはある種の共通パターンがあると言い、公式のような「リーダーの黄金律5E」にたどり着いた。「Envision(描く)」「Express(表現する)」「Excite(鼓舞する)」「Enable(可能にする)」「Execute(実行する)」――の5つの要素で、これらを上手く組み合わせることで、リーダーはビジョンを創造し、チームをワクワクさせ、ムーブメント(流れ)を巻き起こす、と説く。この黄金律の意味と狙いを自身の体験談を交えながら、章立てて論理的に紐解いている。
例えば、「Envision」がなぜ大切なのか。それは「Purpose(目的)」を達成させるための「Why(なぜ?)」から始まるからであり、「When(いつ?)」や「How(どのように?)」ではないのだと解析。日系企業には100年以上の歴史を持つ企業があるが、そうした企業は目的をしっかり持ち続けていると語る。
幼少期から青年までのスポーツや新聞配達、自動車工場での溶接体験などからチームプレーの大切さや改善の重要性を学び、ビジネスマンとしては各国固有の文化に触れる中で「リーダーのあるべき姿」を探求、実践してきた。論理的な分析の中に、著者の人柄が伝わるユーモアあふれるエピソードも。2021年に発売された『THE E5 MOVEMENT』の日本語版として発売された本書は、あらゆる世代のビジネスパーソンに必読の一冊だ。(博)