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2023年9月28日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」194・令和5年度の最低賃金について

Q 令和5年度の最低賃金の金額が決まったと聞きましたが、具体的にはどのような内容でしょうか。

koiwa1.png 令和5年度(令和5年10月から令和6年9月)に適用される都道府県ごとの地域別最低賃金の水準が公表されています。最低賃金には、各都道府県に1つずつ定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定最低賃金」の2種類がありますが、いずれも最低賃金法に基づいて国が賃金の最低額を定めているものであり、使用者はその金額以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。

 具体的な金額としては、東京都1113円(引上額41円)、神奈川県1112円(41円)、大阪府1064円(41円)、愛知県1027円(41円)であり、39円~47円の引き上げとなることで、改定額の全国加重平均額は1004円と初めて1000円を超えることになります。全国加重平均額43円の引き上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額であり、最高額(1113円)に対する最低額(893円)の比率は80.2%であり、9年連続の改善となっています。

 派遣労働者については、派遣先の事業場の所在地の最低賃金が適用されることになり、派遣元の使用者は、派遣先の事業場に適用される最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。そのため、派遣元は、派遣労働者の就業先である派遣先の事業場に適用される最低賃金額を把握する必要があります。派遣先の事業場に特定最低賃金が適用される場合は、その最低賃金額以上の賃金を支払う必要がありますが、①18歳未満または65歳以上、②雇い入れ後一定期間未満の技能習得中、③その他当該産業に特有の軽易な業務に従事の場合は、特定最低賃金は適用されません。

 実際に支払われる賃金が最低賃金額を満たしているかどうかを調べるには、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較することになります。基本給が日給制で各手当(職務手当等)が月給制など組み合わせの場合には、それぞれ以下の式によって時間額に換算して、合計したものと最低賃金額(時間額)とを比較することになります。

〔時間給の場合〕
時間給≧最低賃金額(時間額)

〔日給の場合〕
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、 日給≧最低賃金額(日額)

〔月給の場合〕
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

〔出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合〕
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除した金額≧最低賃金(時間額)


 なお、使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者の範囲、最低賃金額、算入しない賃金および効力発生日を、常時作業場の見えやすい場所に掲示するなどの方法により周知する必要があります。10月から新しい最低賃金が適用されるのにあたっては、それぞれの事業所において的確に周知をはかっていきたいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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