Q 令和6年度の一般賃金を定めた局長通達が出されましたが、具体的にはどのような内容でしょうか。
A 派遣労働者の同一労働同一賃金において「労使協定方式」を採用する場合は、一般賃金の水準や取扱いを記載した職業安定局長通達を遵守する必要がありますが、8月29日、厚生労働省から令和6年度に適用される一般賃金についての局長通達(令和6年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等 に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める『同種の業務に従事する 一般の労働者の平均的な賃金の額』」等について)が発出されました。
「職業安定業務統計」における一般賃金の水準は1218円(時給換算、基準値0年)、前年度から22円の上昇となり、前年度より水準が上がるのは385職種、下がるのは41職種となりました。「賃金構造基本統計調査」における一般賃金の水準は(同)は1276円、前年度から11円上昇となり、前年度より一般賃金水準が上がるのは77職種、下がるのは56職種となりました。令和6年度の一般賃金の概要は、以下の通りです。
「賞与指数」・・・0.02(変更なし)
「能力・経験調整指数」・・・
0年100.0 1年116.2→115.1
2年125.6→126.2 3年129.1→128.1
5年138.1→134.9 10年151.2→147.0
20年191.4→183.1
「学歴計初任給との調整」・・・12.4%→12.6%
「退職金割合」・・・5%(変更なし)
労使協定方式では、局長通達の適用年度に関わらず、「実際に賃金が支払われる時点」で「職種別の賃金×能力・経験調整指数×地域指数」の金額が最低賃金を上回っている必要があり、賃金テーブル等の数値が変更となる場合には、新たな労使協定を締結することになります。労使協定を締結しているすべての職種の賃金について確認し、局長通達の基準を下回ることのないように留意しなければなりません。なお、令和6年度の局長通達では、「第1 基本的な考え方」に以下の文章が追加されています。
令和6年度適用の2年前の令和4年度はまさにコロナ禍が収束しつつあった時期にあたることから、当時と比べると昨今は経済環境が好転し、賃金などの水準も高くなっていると考えられ、派遣労働者の賃金については、そうした全体的な状況を踏まえて、労使で十分な協議を行うことが求められるという趣旨になります。あくまで労使間の自主的な協議について想定されたものであり、何らかの強制力があるものではありませんが、こうした状況を踏まえた円満で誠実な協議に努めていくことが求められるといえるでしょう。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)