今夏の高校野球は慶応高校(神奈川県)が優勝したが、107年ぶりV、部員の自主性尊重、大学野球並みの大応援団など、いろいろな意味で話題も多かった。髪型問題もその一つ。高校野球といえば「坊主頭」が当たり前だったのが、「長髪」の慶応が優勝したことから、髪型問題はほぼ解消した感があるが、賛否については選手たちよりメディアなど"外野"の方がにぎやかだ。みなさん、身に覚えがあるのだろう。私もその一人。
高校時代は軟式テニス部にいたが、夏の合宿前に「坊主頭」を強制された。担任の教諭に理由を聞くと、「運動部なら当たり前。嫌なら参加するな」とにべもない。泣く泣く、五分刈りにして参加した。いま、当時の記念写真を見ると、「坊主頭」もまんざら悪くないが、いまだに引っ掛かるのは教師のパワハラ体質だ。
当時は「戦後民主主義」の時代だったが、ことスポーツに関しては教師の指示は絶対であり、ビンタなどの体罰も珍しくなかった。旧軍隊の体質を色濃く残しており、「坊主頭」もその一環だったように思う。社会人になって長年過ぎてなお、高校野球を見るたびに監督らによる暴力や選手の「坊主頭」を見させられ、「いつまでこんなことをやっているのか」とあきれるばかりだった。
その意味で、「自由な」慶応の優勝は、おおげさに言えば戦前戦中の残滓(ざんし)を一掃したように思われ、胸のつかえが取れた。そんなことを強制される必要はなく、どうするかは自分で決める。髪を伸ばしたければ伸ばせばいいし、「坊主頭」がいいならそうすればいい。来年は両方が混じっているようなチームを見たいものだ。(俊)