Q 令和3年度の労働者派遣事業報告書の集計結果が発表されたと聞きましたが、どのような内容だったのでしょうか。
A 8月9日、厚生労働省から令和3年度・労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)が公表されました。派遣法では、派遣元事業主に対して事業年度ごとの運営状況についての報告書を厚労大臣に提出するように定めていますが、令和3年度の集計は報告対象期間が令和3年4月1日から令和4年3月31日に該当するものになります。
今回の集計結果の概要は以下の通りです。主な数値のうち、派遣労働者数、年間売上高が対前年比で7~8%程度増加し、派遣先件数についてもほぼ横ばいであることから、コロナ禍においても派遣業界が全体として市場規模を相応に拡大させてきた様子を見ることができるでしょう。
1 派遣労働者数・・・・・・約209万人(注1)(対前年度比:8.6%増)
(1)無期雇用派遣労働者 77万5804人(対前年度比:8.8%増)
(2)有期雇用派遣労働者 131万6501人(対前年度比:8.5%増)
2 派遣先件数・・・・・・約75万件(対前年度比:0.1%減)
3 年間売上高・・・・・・8兆2363億円(対前年度比:7.7%増)
4 派遣料金(8時間換算)(平均)(注2)・・・2万4461円(対前年度比:1.1%増)
5 派遣労働者の賃金(8時間換算)(平均)・・・1万5698円(対前年度比:0.7%増)
なお、今回の集計にあたっては、集計の精度をより高める観点から、①売上高について法人全体のものを報告している可能性のある事業所、②派遣労働者の人数に比して売上高が大きい事業所について、誤りがないかの確認を事業所に求め、必要な是正を行ったとされています。あわせて、過去の集計についても、平成22年度以降の事業報告について同様の確認を行い、遡って訂正を行った上で、訂正額について、各年度の公表資料の掲載ページに更新されています。
派遣事業報告書はそもそも事業所ごとに報告することになっていますが、売上高については法人の決算単位で把握している例もあり、事業所ごとに細分化して集計せずに誤った数値を報告している例もあると考えられます。そうした誤りがあると全体の集計結果の精度が損なわれることになることから、労働局が法人全体の数値を報告しているであろう事業所に確認し、また派遣労働者の人数規模の観点からも具体的にチェックをしています。このような確認を労働局から受けることのないように適切な数値を集計・報告することはもちろんですが、今回このような方針のもとに過去分に遡及して修正された集計結果についても必要に応じて参考にしていきたいものです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)