"価値を生む"リーダーの条件とは
著者・高野 研一
経団連出版、定価1760円(税込)
工業化時代のビジネスモデルが終焉を迎え、モノ売りの発想では全く儲からなくなった現在、GAFAMに象徴されるプラットフォーマーやコンテンツプロバイダーが席巻する構造を捉えて本書は「DX時代」と定義する。
その今の時代に伸びているのはオーナー社長の企業だけではないかと著者は見て、創業者たちの「ものの見方」を多元的に考察し、"価値が生まれるメカニズム"の解明を試みている。古くは井深大、松下幸之助、本田宗一郎の起こしたパラダイムシフトのポイントを探る。直近では、イーロン・マスクの打ち出す「ビジョン」に着目し、かつて注目されたHPやGEの「ウェイ」との違いを解説している。また、比較分析という点ではニトリと大塚家具の差を整理する記述も面白い。
DX時代のリーダーは傾聴力やコーチングスキルでは足らず、確固たる思想を見出し、リスクを果敢に取り、バリューチェーンのスクラップアンドビルドを仕掛け、ナンバーワンを狙う姿が求められると語り、最終章ではゼロから1を生み出せる人材の育成策にも踏み込んでいる。
(久島豊樹/HRM Magazine より)