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2023年6月22日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」180・社会保険の賞与に係る報酬の取り扱いQ&A①

Q 社会保険の賞与に係る報酬の取り扱いのQ&Aが出されたと聞きましたが、どのような内容のものですか。

koiwa1.png 健康保険および厚生年金保険の「報酬」「賞与」の区分については、保険料額や年金額の計算の基礎となることから正しく届出を行う必要がありますが、平成30年7月30日に厚生労働省から発出された通知により、「通常の報酬」「賞与に係る報酬」「賞与」の区分について、諸規定や賃金台帳などから二以上の異なる性質を有する手当などであることが明らかな場合は、同一の性質を有すると認められるものごとに判別することなどの取り扱いが明確化されました(「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」の一部改正について、 平成30年7月30日)。具体的には、以下の取り扱いが適用されています。

① 「通常の報酬」「賞与に係る報酬」「賞与」は、名称の如何にかかわらず二以上の異なる性質を有するものであることが諸規定または賃金台帳などから明らかな場合には、同一の性質を有すると認められるもの毎に判別する
② 「賞与」について新たに支給が諸規定に定められた場合は、年間を通じ4回以上の支給について客観的に定められたときであっても、次期標準報酬月額の定時決定による標準報酬月額が適用されるまでの間は、賞与に係る報酬に該当しない


 これらの点は実務的にもかなり複雑な要素を含んでいたため、取り扱いの趣旨を明確化するため、令和5年6月12日に新たに事務連絡が発出され、「『健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて』の一部改正について」に関するQ&Aが公開されました。①の「同一の性質を有すると認められるもの毎に判別する」とは、具体的には、以下の例で考えると理解しやすいです。

<事例1>
 「通常の報酬」以外に支給される手当として、給与規程に「手当A」が規定されているものの、実際の賃金台帳には、「手当A1」(毎月定額により支給される手当)と、「手当A2」(半年毎に支給される手当)に区分して記載されている場合、「異なる性質を有するものであることが諸規定または賃金台帳などから明らかな場合」に該当することから、「手当A1」と「手当A2」は客観的に区分できるものとして、「手当A1」は「通常の報酬」、「手当A2」を「賞与」として取り扱うことになります。

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<事例2>
 「通常の報酬」以外に支給される手当として、給与規程に「手当A1」(毎月定額により支給される手当)と、「手当 A2」(半年毎に支給される手当)に区分して規定されているものの、実際の賃金台帳には、「手当 A」としてまとめて記載されている場合は、事例1と同様に、「手当 A1」と「手当 A2」は客観的に区分できるものとして、「手当 A1」を「通常の報酬」、「手当 A2」を「賞与」として取り扱います。この場合、賃金台帳を見ただけでは実際の手当の内訳を知ることができないため、給与規程の規定にしたがって具体名手当の金額(内訳)を確定した上で、手続きを行うことになります。

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「『健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて』の一部改正について」にかかる留意点について(令和5年6月12日事務連絡)


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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