人事異動の"からくり"を解明
著者・藤井 薫
中央公論新社、定価990円(税込)
3年間のべ86社の「人事異動」をヒアリング調査してきた人事プロフェッショナルによる注目の論考だ。特筆すべきは匿名化したうえで人事担当者のナマの声を再現し、現実を立体的に描き出している点だろう。
「ミドルパフォーマー」「管理職」「役員候補」「タレントマネジメント」の4つの切り口から考察を展開し、会社員読者に向けては"運任せのガチャ"ではなく一定のルールに基づき運用される"人事のからくり"を説明している。一方、配属・異動に「明確な方針がある」企業は少数に留まり、異動原案は事業部のニーズに基づいて策定される実態も明かす(その意味で「上司ガチャ」はありうる)。また、人事部内でも一部しか関わらない役員候補の人材プールにも触れ、対象者は社員の1%、本人に伝えている会社は3割に過ぎない秘密の領域にも踏み込んでいる。
最終章では「これでよいのか? ニッポンの人事異動」と題し、OLD 3K(記憶・経験・勘) から脱し、NEW 3K(記録・傾向・客観性)へ人事部も変わるべきだとメッセージを綴っている。
(久島豊樹/HRM Magazine より)