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2023年3月30日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」168・過半数代表者選出の適切な手続きについて

Q 「労使協定方式」における適切な手続きの流れと留意点について教えてください。

koiwa1.png 今回は派遣法の基本事項についておさらいです。「労使協定方式」では、過半数労働組合または過半数代表者(過半数労働組合がない場合)と派遣元との間で一定の事項を定めた労使協定を書面で締結する必要があり、適切な手続きを経て選出された過半数代表者と締結された労使協定でなければ「労使協定方式」は適用されず、「派遣先均等・均衡方式」が適用されることになります。過半数代表者の適切な選出手続きについてのポイントは以下の通りです。

(1)過半数労働者となることができる労働者の要件
 管理監督者(一般的には部長、工場長など、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある人)でないことが必要です。管理監督者に該当するかの判断は実態によって判断されますので、過半数代表者の選出にあたっては該当する可能性のある人を充てることは避けたほうがよいと考えられます。

(2)過半数代表者選出のための正しい手続き
 派遣労働者の同一労働同一賃金の労使協定を締結するために過半数代表者を選出することを明らかにしたうえで、投票・挙手などにより選出します。選出手続きは、労働者の話し合いや持ち回り会議などのほか、社内メールやイントラネットを使用することも可能です。派遣労働者はもちろんですが、派遣労働者以外の全ての労働者が手続きに参加する必要があります。会社の代表者が特定の労働者を指名するなどして、使用者の意向で過半数代表者が選出された場合は無効になってしまいますので注意が必要です。

(3)メールなどで労働者の意向を確認する場合の注意点
 返信がなかった人を「信任(賛成)」したものとみなすことは、労働者の過半数が選任を支持していることが必ずしも明確にならないものと考えられます。派遣労働者を含むすべての労働者に対してメール(イントラネットなどで意思確認を行う場合も含む)で通知を行った場合、返信のない人を信任(賛成)したものとみなす方法は、一般的には、労働者の過半数が選任を支持していることが必ずしも明確にならないものとされています。多くの人から返信がなく、労働者の過半数が選任を支持しているかが確認できない場合は、電話をする、直接就業場所まで出向くなどして、直接意見を確認する必要があります。

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(4)派遣労働者の意思の反映
 選任投票と併せて、派遣労働者から意見や希望を提出してもらいます。派遣労働者は、自らの待遇について、派遣元と意見交換する機会が少ない場合も多くありますが、このような機会に意見や希望などを提出してもらい、派遣労働者の意思を反映させるような取り組みも有効だといえるでしょう。

(5)過半数代表者が事務を円滑に遂行できるための配慮
 派遣元は、過半数代表者が労働者の意見を集約するために必要な事務機器(社内メールやイントラネットを含む)や、事務を行うスペースを提供するなどの配慮をする必要があります。

 具体的な選出方法としては、以下のような例が考えられます。

①立候補者の募集
 労働者の過半数代表者の選出について全体の流れと趣旨を文書等でアナウンスして、立候補者を募集します。その際には必ず役割を明確にし、期日を指定して立候補者を募ります。「期日が過ぎても誰も立候補者が現れない」という声もよく耳にしますが、この場合は推薦を受け付けることも可能です。会社側から立候補者を推薦することは問題がありません。あくまで推薦であり、その後民主的な手続きによって選出されれば、過半数代表者となることができます。ただし、会社が特定の労働者を指名するなどして、使用者の意向によって過半数代表者が選出された場合は、協定が無効となります。

②投票
 過半数代表者を選出する旨と役割を明確にして示し、候補者名(プロフィール含む)、投票期間、選任された場合の任期を通知して、投票を促します。派遣労働者を含むすべての労働者が参加する必要があるため、派遣業務に関わりのない労働者などを除外しないように注意する必要があります。

③選任投票結果の告知
 選任投票結果を書面、メールなどで総労働者数・過半数・投票総数・有効投票数・無効票数などと共に告知します。なお、以下のような選出方法は問題があります。

・メール、イントラネット、給与明細同封といった方法で一方的に送り付け、その後の意思確認をしていない
・意見がなかった人を全労働者数から除いてカウントしている
・労働基準法の労使協定(いわゆる36協定)の過半数代表者の選出と一緒に行っているが、労働者派遣法の過半数代表者であることを明らかにしていない

 派遣元は、労働者が過半数代表者であることなどを理由として、労働条件について不利益な取り扱いをすることは禁止されていますのでご注意ください。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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