失われなかった企業は何をしたのか?
著者・綱島 邦夫
日経BP /日本経済新聞出版、定価2970円(税込)
70年以上の歴史を誇る日本の大企業のうち、「失われた30年」の間も成長を続ける15社に注目。これら企業の経営に共通する10の「黄金法則」を見出すオリジナリティあふれる論考だ。
第Ⅰ部では「失われた30年」を10年単位で検証し、破壊的な改革に踏み出した米国企業と悪魔のサイクルに陥った日本企業を比較する。第Ⅱ部では、その間もイノベーションを起こし好業績を上げ続ける「失われなかった」企業にスポットを当て特徴を分析している。面白いのはドラスティックな手法ではなく、極めて日本的なアプローチで成功している点だ。例えば、プロ経営者のトップダウンではなくサラリーマン社長が率いる全員参加のボトムアップ型組織が実は変革を成し遂げている。「戦略二流・実行一流」かつ「厳しいが温かい」従業員への向き合い方が奏功していると著者は解説する。第Ⅲ部では改めて「会社をつくり直す」方策を概観し、「課長」の復権、そして「人事部」の改革を提案。
400ページを超える大作だが、記述は終始明快で、読者は十分ついていける。
(久島豊樹/HRM Magazine より)