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2023年2月 9日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」161・派遣法違反の行政処分の公表

Q 派遣法違反の行政処分にはどのようなものがありますか。また、その結果は公表されますか。

koiwa1.png 労働者派遣法の違反行為に行政が事業者に与える作用としては、罰則と行政処分があります。罰則は法律の規定に基づいて罰金などを課すものであり、行政処分は許可事業者に対して許可の取消しなどの処分を課すことをいいます。許認可行政である派遣法は、後者を中心に行政による指導監督が行われています。

 主な罰則としては、禁止業務への派遣、名義貸し、無許可派遣、偽りや不正行為による許可・期限更新の場合の1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(59条)、派遣可能期間の制限違反、就業条件明示違反の場合の30万円以下の罰金(61条)、厚生労働大臣による改善命令に従わない、申告者に対する不利益な取り扱いの場合の6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金(60条)があります。改善命令という行政処分に従わない場合に罰則が予定されているところにも、派遣法の特徴があります。

 派遣法に違反した場合の行政処分としては、①業務改善命令、②事業停止命令、③許可の取消しがあります。

①業務改善命令
 派遣法に「厚生労働大臣は、派遣元事業主が当該労働者派遣事業に関しこの法律その他労働に関する法律の規定に違反した場合において、適正な派遣就業を確保するため必要があると認めるときは、当該派遣元事業主に対し、派遣労働者に係る雇用管理の方法の改善その他当該労働者派遣事業の運営を改善するために必要な措置を講ずべきことを命ずることができる」(49条1項)と定められているのが根拠であり、この規定に基づいて、厚生労働大臣は派遣元に対して業務改善命令を下すことができます。業務改善命令は、適正な派遣労働者の就業を確保するための措置であり、雇用管理や業務運営の改善を促すことを目的としています。

②事業停止命令
 事業停止命令は、派遣法や職業安定法の規定やそれに基づく処分などに違反したり、派遣元が許可の条件に違反した場合に下されます。雇用管理や業務運営の改善を図るためや懲戒的な意味を伴い、派遣事業の全部または一部の停止が命じられます。

③許可の取消し
 許可の取消しは、派遣元が派遣事業を引き続き行わせることが適当でないと判断された場合に、許可の取消しが行われるものであり、行政処分の中で最も重いものです。許可の効力が失効することで、該当事業所はそれ以降事業を行うことが許されなくなります。
 許可の要件に違反している場合、許可の欠格事由に該当している場合、派遣法の規定やそれに基づく処分などに違反した場合に取消し処分が下されることになりますが、派遣元が複数の事業所を設けている場合には、該当する事業所にとどまらず、すべての事業所が取消しの対象となります。

 なお、行政処分については、命令日(取消日)、名称(事業所名)、管轄労働局などが「労働者派遣事業に係る行政処分」として、厚生労働省のホームページで公表されていますので、だれでも概要を確認することができます。2022年11月1日現在の情報としては、①業務改善命令:0件、②事業停止命令:0件、③許可の取消し:28件とされています。

 ただし、業務改善命令、事業停止命令については、事業報告未提出にともなう処分は除かれ、現在実施中のもののみが掲載の対象であり、許可の取消しについては、関係派遣先派遣割合報告未提出にともなう処分は除かれ、許可の取消し日より5年以内のもののみが掲載の対象となっています。業務改善命令や事業停止命令は実施期間が終了したものは対象とはならず、許可の取消しについては、原則として2004年3月以降の実績が公表されているという点には、留意したいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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