実際の事件・不祥事に学ぶ危機管理
著者・田中 優介
新潮社、定価836円(税込)
危機管理のプロコンサルタントが、組織を守る立場から外部対応のノウハウを明かした1冊。危機管理の目的は、①危機を回避する、②ダメージを小さくする、の2点と定義したうえで、感知・解析・解毒・再生の4つのステップで対応していく順番が肝要だと基本を強調する。また、科学的に全体を把握する手段として、天災か人災か、自分たちは加害者か被害者か、人・物・カネ・情報への影響はどうか、と掛け算し16分野の危機を洗い出す手法も公開している。
もっとも本書の特筆すべき特徴は,政界・経済界・芸能界で問題になった実際の不祥事・スキャンダルを題材に、被害者やマスコミへの向き合い方を分析しながら最適解を探っていく具体的な記述にある。主要な解説は「危機管理ゼミナール」のスタイルを取り、教授の問いに受講生たちが討議を重ね、さらにレクチャーが加わる構成で進められているので読みやすさも抜群だ。
「社員が痴漢の疑いで逮捕されたと記者から一報を得たとき会社はどう対応するか」例えばそこからゼミ生と共に考えてみたい。
(久島豊樹/HRM Magazine より)