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2022年12月15日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」153・健康保険証の通称表記について

Q 健康保険証に通称名の記載や旧姓併記をする取り扱いが可能なケースがあるそうですが、具体的にはどんな仕組みですか。

koiwa1.png 健康保険被保険者証には、通常は戸籍上の氏名や性別が記載されることになりますが、保険者(けんぽ協会や健保組合)がやむを得ないと判断した場合には通称名などを記載することができます。外国人で本国名とは別に日本で社会生活をする上で、日常的に使用している日本式の名前を通称として記載するケースがありますが、性同一性障害を有する人が通称名の記載や旧姓の併記の申し出を行うこともできます。

 被保険者証に通称名を記載する申し出を行った場合は、表面の氏名欄に「通称名」、性別欄には「裏面参照」と記載され、裏面の備考欄に「戸籍上の氏名」と「性別」が記載されることになります。申し出にあたっては、①被保険者証への通称名記載に関する申出書、②医師の診断書等の性同一性障害を有することを確認できる書類、③通称名が社会生活上、日常的に用いられていることを確認できる書類(通称名で受領している郵便物など)、④健康保険被保険者証再交付申請書が必要です。具体的には、事業主を経由して(任意継続被保険者を除く)、被保険者証に記載されている協会けんぽや健保組合の支部などに郵便で提出することになります。

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 通称名を併記する申し出を行った場合は、表面の氏名欄には戸籍上の氏と名の間に「括弧書きで通称名」が記載され、裏面の備考欄には「氏名欄の括弧内は通称名」と記載されることになります。被保険者証は身分証明書的な機能も持つことから、戸籍上の氏名を記載することは必要とされるものの、日常生活で使用する通称名も便宜上併せて記載したいというケースは、こちらの方法を選択することになります。この場合は、①被保険者証氏名欄の通称名併記に関する申出書、②通称名を併記した住民票の写し、戸籍謄(抄)本等の通称名と戸籍姓が確認できる書類のいずれか、③健康保険被保険者証再交付申請書を提出することになります。

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 なお、健康保険被保険者証再交付申請書は令和5年1月から様式が新しくなることが予定されており、新様式では被保険者だけでなく再交付を希望する被扶養者の氏名も保険証に記載するカタカナ表記をする欄が追加されています。マイナンバーカードに健康保険証の機能が統合されて完全に移行するとこのような表記の問題はなくなることになりますが、現在の時流を反映して実務的にも健康保険証の氏名表記が問題となるケースがある点は、予備知識として認識しておきたいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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