歴史を貫く「官位」の力学に注目
著者・遠山美都男/関 幸彦/山本博文
朝日新聞出版、定価1023円(税込)
古代・中世・戦国・近世の4章を歴史研究家3名で書き分けた書名通り「人事の日本史」だ。古代・中世では聖徳太子の抜擢に始まり、「冠位十二階」という等級制度、大化の改新で整理された「考課」にスポットを当てている。
とりわけ官位はその後、徳川幕府まで続く為政者たちの秩序を支えるカギになったと確認し、今も企業・官庁で機能する等級制度と役職の2種類の肩書きに生き残っているのではないかと推論を展開。史実からは、義経にとって頼朝に無断で授かった官位は「毒まんじゅう」に作用したと論じている。戦国時代では、官位を付与することで立場を維持しようとした朝廷と、権威を得て武力制覇を狙う武将たちとの間で、相互利用の力学が働いたと読み解く。また、キャリアとノンキャリアを分断する"壁"の存在も時代を縦貫してうかがえるとし、日本的な人事の特徴の1つに挙げている。
基本的には資料・史実の研究に軸足が置かれ、エンタメとは一線を画した記述ながら、歴史好きの人事担当者にとっては腑に落ちるツボも多そうだ。
(久島豊樹/HRM Magazine より)