米ツイッター社を買収したイーロン・マスク氏の急進的なリストラ手法をみていると、日本との違いを改めて痛感する。
買収完了と同時に役員をまとめてクビにしたと思ったら、7500人いる社員の半数をレイオフするため、メールを送って「長時間、高いテンションで働け。明日までに返事をせよ。同意できなければ3カ月分の給料を払うから退職を」と迫ったという。居残りを望む社員には在宅勤務を原則認めないそうだ。
荒っぽいというか、超ドライというか。いくら経営不振の立て直しと言っても、日本の大企業がこんなことをしたら、ハチの巣をつついたような騒ぎになるだろう。労働組合のある会社なら労組がストを構えて反発するだろうし、労働基準監督署あたりもすっ飛んできて、「解雇はまかりならん」と経営者に圧力をかけるだろう。
「解雇権の濫用法理」など、日本のような厳しい法的規制のない米国ならではのリストラ劇だが、経営サイドからは「米国がうらやましい」との声も漏れ聞こえてくる。「社員を大切にしない会社は滅びる」と断言する学者もいる一方で、マスク流リストラにある種の"ダイナミズム"を感じ取れるからだろう。「日米では労働制度が違う」と言い切るだけでいいのか。日本経済の長期に及ぶ地盤沈下は、どこに原因があるのか。けっこう、奥の深い話になると思うが。(俊)