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2022年11月24日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」150・国際男性デーと男性の働き方

Q 先日、今年の国際男性デーだったと聞きましたが、どのような記念日なのでしょうか。

koiwa1.png 毎年11月19日の国際男性デーは、1999年からトリニダード・トバゴで始まった記念日であり、男性と男の子のロールモデルに光を当て、その問題に取り組み、解決していくことを目指す国際的なイベントとされています。毎年3月8日の国際女性デーは、1904年にニューヨークで起こったデモを発端として、1910年にコペンハーゲンの国際会議で女性の記念の日として設定されたことで有名ですが、国際男性デーの方はまだあまり知られていないのかもしれません。

 毎年記念日の前後には、オンラインを含めたさまざまなセミナーや勉強会などが行われます。人生100年時代や本格的なダブルインカム時代を迎え、従来の男女(夫婦)の役割分担意識が変化し、男性の育児休業取得が推進される流れの中で、男性の生き方や働き方を問い直すような趣旨のイベントも増えていると感じます。

 「男女共同参画白書」令和4年版においても、人生100年時代の男女共同参画の課題のひとつとして、男性の人生も多様化していることを念頭においた政策が必要であるとの記載が加わったことから、さまざまな自治体や企業においても従来からの女性参画推進のテーマとともに、男性の多様性にフォーカスした発信や施策が加速しつつあります。

 同白書の「人生100年時代における結婚と家族~家族の姿と変化と課題にどう向き合うか」では、「女性の人生の多様化とともに、男性の人生も多様化していることを念頭においた政策が必要である」という項目が新たに掲げられた上で、以下のような国としての認識が示されています。

 昭和の時代(戦後)、95%以上の男性が結婚し、いわゆる「皆婚社会」であった。その時代の典型的な家族像は、家庭のことは専業主婦の妻に任せて夫は仕事一筋、終身雇用による安定と年功序列型賃金により、やがて安定した中高年期が訪れるというものであったが、現在は、未婚者も離婚も増え、また、共働き世帯が専業主婦世帯を大きく上回っている。また、男性が地域社会で孤独・孤立に陥るリスクも増大している。このため、地方自治体の男女共同参画センター等で男性相談窓口を整備・拡充していくことが重要である。
 家族の姿の変化とともに、結婚に対する考え方、子供を持つことに対する考え方も、男女ともに多様化している。他方、深刻化する少子化・人口減少に対応するためには、結婚を希望する人が結婚でき、子供を持ちたい人が子供を持てる環境をつくることが重要である。これまでも、国・地方自治体において結婚支援、子供・子育て支援を行ってきているが、こうした支援は引き続き必要である。さらに、現在の日本では恋愛結婚が結婚の9割近くを占めていることから、恋愛、交際、結婚に至る過程でお互いを尊重しあうことの重要性や、最低限身に付けるべき大切なルール、例えば、いわゆるデートDVやハラスメントの問題について、教育・啓発の中で学ぶことも重要である。
 人生100年時代を迎え、日本の家族と人々の人生の姿は多様化し、昭和の時代から一変した。今後、男女共同参画を進めるに当たっては、常にこのことを念頭におき、誰ひとり取り残さない社会の実現を目指すとともに、 幅広い分野で制度・政策を点検し、見直していく必要がある。


 時代が昭和、平成から令和に移ろう中で、リアルに直面する家族像や働き方のモデルも画期的に変化し、従来の意識や仕組みのままで働き生活する男性には社会の中で孤独・孤立に陥るリスクも少なくないという記述がされている点は、男女共同参画の推進にあたっては女性の活躍を後押しする目線とともに、男性の抱える多様化の問題といかに向き合うかが同時に求められている時代の特徴を反映しているといえるでしょう。

 同白書では、「家族の姿の変化、家族に関する意識が変化し、家族が社会保障の機能を十分果たせなくなった。これらの変化に応じて、税・社会保障制度等は、改変されてきているが、現在の家族の姿に十分対応できておらず、制度等の恩恵を十分に受けられない人々がいる」という認識も示されていますが、まさに今が時代の過渡期だという意識を共有しつつ、職場におけるダイバシティ推進や風土改革においては、必ずしも女性のみがマイノリティではなく、男性も幅広く多様化している時代だという認識を底流においていくことが求められる時代かもしれません。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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