無理せず働き続けるシニアの実態とは
著者・坂本 貴志
講談社、定価1012円(税込)
勤労者の定年後の働き方につき事実ベースで検証していく論考だ。
第1部は公開統計資料から「15の事実」を並べ、とりわけ「70歳・男性は45.7%が働いている」と象徴的なトピックにスポットを当てる。年収や生活費の動向を追いつつ、働き続けることができれば老後資金の蓄財は不要だと見積もる。第2部では、60代・70代の7人の勤労事情をインタビューをもとに紹介(仮名・架空スートーリーで再現)。現役時代のキャリアと対比させ、週3日程度の肩書きのない現場仕事や趣味に近い自営業的な定年後の働き方をトレースしている。第3部では、先人たちがキャリアの転機にどう向き合ってきたかを総括し、当事者たちが健康を維持し、無理なく働いている現実を捉え、「小さな仕事」を通じて精神的には豊かな暮らしを手に入れていると肯定的に考察する。
企業人事では年次管理からペイフォーパフォーマンスへ緩やかに移行が進み、社会施策では秩序ある労働市場の形成が模索されていると語るなど、白書ほど無機質ではない提言の伴った分析が読ませる。
(久島豊樹/HRM Magazine より)