コラム記事一覧へ

2022年10月25日

【ブック&コラム】『働く悩みは「経済学」で答えが見つかる』

知の巨人たちが資本主義を問い直す

c2209_2.jpg著者・丸山 俊一
SBクリエイティブ、定価1045円(税込)


 本書は、20代~40代の社会人勉強会「創造性の大学」での対話記録をベースにしたフィクション。歴史上の先生たち計17人が出没し、過去から未来に至る社会課題を捉えて白熱の講義を展開するユニークな構成だ。

 例えば、転職と給料の話題を契機にマルクス先生が「価値」について語り出し、忙しさを漏らす参加者の声を聞きつけ「疎外」を解説する。現代の労働者はスマホを駆使し自らアイデアを生み出せる立場でもあるので生産手段の解放が進んでいるとの解釈も示す。また、クリエイティブワーカーのような働き手の場合、「収入=生活の糧」という合理性だけでは説明できないため、ベーシックインカムの支給では解決策にならないとケインズ先生は懐疑的に論じる。さらに「毎日、疲れるのは資本主義のせいか?」との設問に至っては「現代の疲労には原因がない」とボードリヤール先生がシュールに暴走する、といった具合だ。

 WEB3.0による社会変化やシンギュラリティがもたらす第四次産業革命を見通すなど、学説講義とは違って飽きる隙はなさそう。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

PAGETOP