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2022年9月15日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」140・改正職業安定法について①

Q 10月から改正職業安定法が施行されると聞いています。今回このような改正が実施された背景について教えてください。

koiwa1.png 10月1日施行の改正職業安定法では、新たに定義づけられた「特定募集情報等提供事業者」に届出義務が課せられ、求人等に関する情報について的確な表示が義務付けられるなどの仕組みが制度化されることになります。今回の改正の目的(基本的な考え方)については、「雇用仲介事業に関する制度の改正について(報告書)」(令和3年12月8日:労働力需給制度部会報告書)を見ると端的に理解することができます。

(1)IT技術等の進展に伴い、多種多様なサービスを提供している雇用仲介事業者が労働市場において果たす役割を積極的に評価し、労働市場において需給調整機能の一翼を担う者として位置づける必要がある。
(2)職業安定機関は、労働市場全体の需給調整機能を高め、実効的な雇用対策を講じることが重要であり、多様な雇用仲介事業者とも情報の共有や連携を進めていくことが求められている。
(3)利用者が安心してサービスを利用することができるため、雇用仲介事業者が依拠すべきルールを明確にし、公正、適正かつ効率的なマッチングの実現に向けて、有益なイノベーションを阻害することのないように留意する必要がある。
(4)雇用仲介事業の機能強化と募集情報等提供事業の適正な運営を確保し、労働市場が的確かつ効率的に機能するための基盤を整備するため、雇用仲介事業に関する制度の改正を行い、具体的措置を講ずることが必要である。


 従来の雇用仲介事業においては、ホワイトカラー系の高年収職種は民間職業紹介事業者、サービス・ブルーカラー系などの比較的年収の低い職種はハローワークが扱うなどの棲み分けがなされてきましたが、求人メディアが紙媒体からインターネット化するとともに幅広い職種・年収を取り扱うようになり、ハローワーク・民間職業紹介事業者・求人メディア3者の領域が重複する状況に変化し、さらにIT技術の進展によって、アグリゲーターや利用者DB、SNSなど新しいサービスが登場することで、以前に増して複雑な様相をきわめてきています。

 雇用仲介事業者を取り巻くルールが不明確なことから求職者に対して不適切な情報がもたらされたり、運用上の問題などが生じる可能性が指摘される一方、同じ雇用仲介事業者の中に許可事業である職業紹介事業者から何らの規制の対象となっていない求人メディアなどまで幅広い事業者が存在することによって、事業者間の不均衡や不公正が生じる可能性もあることから、新たに届出制が課せられたり、求人情報などについて的確な表示を義務付けられる制度などのルールが施行されることになりました。

 このような背景や状況への対応として今回の改正が実施されたことをしっかり理解しつつ、(特定)募集情報等提供事業者や職業紹介事業者がこれから取るべき対策にしっかりと取り組んでいきたいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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