Q 人材開発支援助成金の長期教育訓練休暇等制度、自発的職業能力開発訓練、定額制訓練とはどのような制度ですか。
A 前回のコラムに引き続き、「人への投資促進コース」の6つのコースのうち、長期教育訓練休暇等制度、自発的職業能力開発訓練、定額制訓練の概要を簡潔に整理します。
(4) 長期教育訓練休暇等制度
働きながら訓練を受講するための長期休暇制度や短時間勤務等制度を導入する事業主に対して助成される制度であり、「長期教育訓練休暇制度」と「教育訓練短時間勤務等制度」があります。
「長期教育訓練休暇制度」は、労働者が自発的に訓練を受講するための休暇制度であり、30日以上の長期教育訓練休暇の取得が可能な制度を導入し、実際に適用した事業主に助成されます。制度導入に対して20万円が支給され、有給の休暇に対して1人につき1日6000円、最大150日分の賃金助成があります。
「教育訓練短時間勤務等制度」は、労働者が自発的に訓練をするための制度であり、最低1時間、30回以上の所定労働時間の短縮および所定外労働時間の免除が可能な制度を導入し、実際に適用した事業主に対して20万円が支給されます。所定労働時間の短縮は、日単位ではなく、1時間単位(1日につき1時間以上で所定労働時間未満の範囲)であり、1日に複数回利用した場合は1回とします。
(5) 自発的職業能力開発訓練
労働者が自発的に受講した事業場外職業訓練について、制度に基づいて直接的な経費の全部または一部を負担する事業主に対して助成されます。事業主からの業務命令ではなく、労働者が自発的に行った訓練が対象となりますが、労働者が自ら申込んで受講料などを支払い、制度に基づいて事業主が訓練にかかった費用を半分以上負担した場合、その経費の30%が助成されます。
全訓練の8割以上受講、実訓練時間数が20時間以上であること、職務に関連した専門的な知識および技能を習得させるための訓練(職務関連訓練)であること(共通スキル訓練は対象外)、事業外訓練であることなどが要件となります。自発的に実施されるeラーニングや通信制による訓練の場合は修了していることが求められ、受講日などが分かる資料を添付しなければなりません。
(6) 定額制訓練
労働者の多様な訓練の選択・実施を可能とする「定額制訓練」を利用する事業主に対し助成されます。「定額受け放題サービス(サブスクリプション)」とは、広く一般に公開されており、さまざまな人が受講できるもので、1訓練当たりの対象経費が明確でなく、定額制で複数の訓練を受けられるeラーニングサービスのことをいいます。
対象労働者の受講時間数を合計した時間数が、支給申請時において10時間以上であり、計画時に対象者一覧に記載されている者で、修了した訓練の時間数が1時間以上である訓練に限られ、合計に含めることができる訓練は、「職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練」(職務関連訓練)に限られます。
すべての訓練内容が対象となるわけではなく、パック契約の場合は支給対象外訓練部分、訓練受講者数に応じて契約料が設定されている場合は「訓練別対象者一覧」に記載されている人数に対応した区分の契約料金(契約と助成対象人数との関連性はない)が対象となります。
「人への投資促進コース」は、政府が推進するデジタル化に対応した高度人材の開発のほか、自律的な働き方が求められる時流を反映した労働者の自発的な訓練にも助成金が適用されるなど、従来よりもより多様な労働者が活用できる柔軟な仕組みになっています。高度デジタル人材や成長分野の人材教育を行う場合はもちろん、自発的職業能力開発訓練や定額制訓練などは業種や業態を問わずに幅広い活用の可能性がありますので、場面に応じて効果的な実施を検討したいものです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)