「4低」デフレからの脱却は
著者・永濱 利廣
講談社現代新書、定価924円(税込)
「日本病」という呼称が広がりつつある。かつての「英国病」になぞらえたものだが、"ダメ経済"の代名詞のように使われているのは愉快なものではない。しかし、冷静に現実を見据えれば、そう呼ばれても仕方のない面のあることも確かだ。本書は「日本病」の原因と処方箋をコンパクトにまとめている。
バブル崩壊以後、日本は「低所得、低物価、低金利、低成長」の「4低」=デフレが続いており、ふと世界を見渡せば先進国集団から脱落しつつあり、中国、韓国などの第2集団に吞み込まれつつある。この30年間、ほとんど経済成長してこなかったツケが回ってきたという。
本書は「4低」のそれぞれについて原因を分析し、低中所得層への厳しい締め付けを意味する「スクリューフレーション」のただ中にあるという。あるいは、欧米の格差拡大に対して、日本は「1億総貧困化」したとも。
主要な原因は財政・金融政策の失敗を続けたことにあると分析し、「財政健全化」には批判的だ。とにかく、積極財政を通じてデフレ脱却を図るしかないと結論付けている。図表やグラフを多用したわかりやすい解説だ。(本)