コラム記事一覧へ

2022年7月28日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」133・人材開発支援助成金「人への投資促進コース」②

Q 人材開発支援助成金の高度デジタル人材訓練、成長分野等人材訓練、情報技術分野認定実習併用職業訓練とはどのような制度ですか。

koiwa1.png 「人への投資促進コース」は6つの種類の訓練などに区分されますが、そのうち高度デジタル人材訓練、成長分野等人材訓練、情報技術分野認定実習併用職業訓練の概要を簡潔に整理します。

(1)高度デジタル人材訓練

 DX推進や成長分野などでイノベーションを推進する高度デジタル人材の育成の訓練を行う場合などに経費助成、賃金助成が行われます。高度デジタル人材訓練の対象は日本標準産業分類の大分類が「情報通信業」(通信業、放送業、情報サービス業、インターネット附随サービス業、映像・音声・文字情報制作業)であり、産業競争力強化法に基づく事業適応計画やDX認定(独立行政法人情報処理推進機構)などを受けていることが要件となります。DX認定を取得する事業者は2021年12月時点で221社であり、「経営者が、デジタル技術を用いたデータ活用によって自社をどのように変革させるかを明確にし、実現に向けた戦略をつくるとともに、企業全体として、必要となる組織や人材を明らかにした上で、ITシステムの整備に向けた方策を示し、さらには戦略推進状況を管理する準備ができている状態」であることが求められます。

 正規社員・非正規社員ともに対象となりますが、助成金を受けようとする事業所で訓練実施期間中に「訓練別の対象者一覧」(様式4号)に記載のある雇用保険の被保険者であり、訓練を受講した時間数が実訓練時間数の8割以上であることが必要です(基本的に他の訓練メニューも同じ)。

 カリキュラムのある実訓練時間数(総訓練時間から移動時間などの助成対象とならない時間、助成対象とならないカリキュラムなどの時間を除いた時間)は10時間以上で、OFF―JTであり、職務関連訓練(接遇・マナー講習などの社会人として共有して必要とされる訓練を除く)でなければなりません。

(2)成長分野等人材訓練

 海外を含む大学院に正規過程、科目等履修生、履修証明プログラムでの訓練を行う事業主に対して、経費助成や賃金助成が行われます。正規社員・非正規社員ともに対象となり、カリキュラムのある実訓練時間数が10時間以上あることが要件となります。海外の大学院の場合は、デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革、クリーンエネルギー、バイオ、宇宙等の先端技術、特定の経営分野などに限定され、海外の大学院での訓練は賃金助成の対象とはなりません。

(3)情報技術分野認定実習併用職業訓練

 IT分野未経験者の即戦力化のためにOFF-JTとOJTの組み合わせの訓練を実施する事業主に経費助成、賃金助成が行われます。「情報通信業」に限定され、IT関連業務を主に担う組織やDXを推進する組織を有していることが必要です。正規社員のみが対象であり、訓練開始時点で15歳以上45歳未満の労働者が該当しますが、新規学卒予定者を除いてキャリアコンサルティングを受けてジョブカードが交付されることが必要となります。

 情報処理・通信技術者の職種に関連する業務に必要となる訓練であり、OJTとOFF-JTに密接な関連性が必要とされるため、共通スキル訓練はOFF-JTの実訓練時間に占める割合が半分未満であれば認められます。OJT指導者は、IT関連資格(ITSSレベル2以上)を取得している者、または実務経験が10年以上の者であること(「IT関連業務を主に担う組織やDXを推進する組織を有していることの要件を用いる企業」の場合に限る)が必要となり、OFF-JTについては事業外訓練に限られます。

 実習併用訓練の計画に沿って「適格な指導者」のもとで計画的に行われるOJTが該当し、訓練開始日の2か月前までに認定を受けて行われる実習併用職業訓練を助成の対象としています。原則対面による訓練であることが必要であり、大臣認定の対象には、eラーニングにより実施される訓練と通信制により実施される訓練は含まれませんが、認定を受けた訓練と内容に連続性があり付加的にeラーニングにより実施される訓練は助成の対象となります。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

PAGETOP