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2022年7月21日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」132・人材開発支援助成金「人への投資促進コース」①

Q 人材開発支援助成金の「人への投資促進コース」とは、どのような制度ですか。

koiwa1.png 人材開発支援助成金とは、事業主があらかじめ策定した計画に従って労働者の職務に関連した知識・技能の習得のための職業訓練などを実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。キャリア形成促進助成金から改称・再編されましたが、複数のコースが新設・改変され、生産性要件を満たす事業所への増額の適用などもあり、多くの事業所に活用されています。これまで特定訓練コースや特別育成訓練コースなど7つのコースがありましたが、8つ目のコースとして「人への投資促進コース」が新設され、令和4年度から令和6年度まで実施されます。

 岸田政権の目玉政策として新しい資本主義実現会議が設置されていますが、この中で人的資本への投資支援施策についての議論が進められています。令和3年12月27日から令和4年1月26日までの1か月間、「人への投資」の「能力開発」「労働移動」に関する支援策・内容について国民からの提案が募集され、742件(従業員342件、経営者188件、人材サービス事業者226件、その他158件)の提案が寄せられました。令和4年3月30日に公開された主な提案の概要では、以下のような事項が提起されています。

・企業が従業員に対して実施する研修(Off-JT)について様々な分野をオンラインで効率的に学びたいという課題に対する提案
・会社から求められるスキルだけでなく、労働者自らが必要と思うスキルを伸ばしたいという課題に対する提案
・学び直しのための時間がとれないという課題に対する提案
・自社が求めるスキルに特化して専門家にカリキュラムを作成してほしいという課題に対する提案
・デジタルなど成長分野で即戦力の者を採用したいという課題に対する提案
・成長分野への労働移動を促進していくべきという課題への提案
・学び直しのための費用を支援してほしいという課題への提案
・非正規雇用労働者の教育訓練を行い、正社員化してほしいという課題への提案


 これらのさまざまな提案や問題提起を受けて、令和4年度の実施に向けた対応方針が整理されています。具体的には、すべての訓練をオンライン研修(eラーニング)の対象にし、オンラインの定額受け放題研修サービス(サブスク)や追加料金の発生するコースを含むオンライン研修の対象化、労働者が自発的に受講した教育訓練費用を事業主が一部負担する場合は業務命令でなくても事業主に対して助成の対象とし、新たに「休暇制度」を導入した企業のみでなく、すでに休暇制度導入済の企業への助成などといった取り組みが具体化され、人材開発支援助成金の対象・範囲が拡充されています。

 「人への投資促進コース」は、いわゆる教育系の助成金の範囲が広がることで事業主の選択肢が増えることになり、リスキリングへの取り組みへのハードルを引き下げる効果が期待されることで、多様な人材教育や自律的な働き方を推進する上で積極的な活用が望まれるといえるでしょう。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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