Q 最近は夏に日傘を利用する男性も少なくありませんが、服装規定や服務規律との関係はどのように考えたらよいでしょうか。
A 記録的な早さで全国的に梅雨明けが宣言された今年は6月末から真夏のような猛暑が続いており、例年以上にデパートなどでの日傘の売れ行きが良いそうです。かつての習慣では日傘はもっぱら女性が身に着けるものという発想が根強くありましたが、昨今では男女関係なく使えるアイテムだという考えが広まりつつあり、街中で日傘をさす男性の姿もそれほどめずらしくはなくなってきました。
環境省も熱中症対策として、屋外での日傘の利用を推奨しています。環境省のPOP「夏の熱ストレスに気をつけて!」(平成31年度 暑熱環境に対する適応策検討調査業務報告書)では、「日傘を使って強い日差しから体を守ると、汗の量が約17%減る」とされ、2016年の研究「日傘による暑熱緩和効果の解明」(科研費助成事業)でも、夏季の屋外で日傘を使用することで、頭部の体感温度が3.9~9.3℃、全身の体感温度が1~2℃低下することが実証されています。今日では男性が日傘を利用することへの違和感や抵抗感は薄れてきているといえ、男女に関わらず、炎天下での紫外線を予防し、熱中症の発症を抑止する効果が期待されているといえるでしょう。
日傘なども広い意味でのドレスコードです。職場のドレスコードは服装規定や服務規律で定められるのが一般的ですが、日傘に関する規定が明文で置かれている例はほとんどないと思います。昨今は男女別の服装規定についても合理性の限りでできるだけ多様性が尊重されることが要請される時代ですが、もし日傘の利用を女性に限定している取り扱いや職場風土があった場合には、時代に合わせて男女共通のルールに改めることが望ましいでしょう。
事業主が従業員の日傘利用を制限できる例としては、屋外での危険を伴う作業時や視界不良による隣人との接触などの回避や、屋根付きの空間での作業など日傘利用の合理性が期待できない場面などに限定されると考えられます。
外回りの営業マンなどでは、従来の社会通念で男性の日傘利用が一般的ではなかったことから、日常的に日傘をさして就業することについて、周囲の目線が気になるという例もあるかもしれません。今の時代、具体的に顧客などから指摘されるという場面は考えにくいと思いますが、万が一そのような状況が起こった場合には、事業所としては従業員の健康管理への配慮を含めて全社的に取り組んでいることを示した上で、本人の立場を擁護していくことが大切でしょう。
男性の日傘利用について、上司や先輩社員などがそれを禁止するような言動をとったり、事実上利用しづらいような雰囲気を積極的に意図したような場合は、ケースによってはパワハラに該当しかねない可能性もありますので十分に注意したいものです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)