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2022年7月 7日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」130・キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアル

Q 派遣労働者のキャリアアップに取り組みたいと考えていますが、具体的な評価シートのイメージができません。何かよい事例などはありませんか。

koiwa1.png 派遣労働者へのキャリア形成支援制度は許可事業者に課せられた義務であり、許可・更新基準のひとつでもあるため、各事業者でさまざまな取り組みが行われています。119120回で紹介した厚生労働省の「派遣労働者のキャリア形成に向けた取組事例集~同一労働同一賃金に向けた取組を踏まえて~」などで具体的事例の一端をみることができます。

 ただ、現場の声を聴いていると「派遣労働者の評価制度がうまく作れない」「派遣先業務に対応した評価方法が分からない」というケースもあります。評価シートや評価制度などは各種のeラーニング事業者から提供されるサービスなどもありますが、基本的には派遣先業務の実態に応じて自社で作成・運用すべきものですので、とりわけ許可取得に向けた準備段階や教育訓練担当者などが交代したような場面では、苦労する例も少なくないようです。

 このような場合は、厚生労働省の「キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアル」が参考になります。国が推進する職業能力評価基準の導入・運用をはかるための実用ツールであり、必ずしも派遣労働者のキャリア形成支援制度の構築を目的としたものではありませんが、ホームページからダウンロードするだけでキャリアマップ、職業評価シート、導入・活用マニュアルの具体例を手にすることができ、人事、労務管理、情報システム、総務、経理などの事務系職種と、製造業、警備業、介護事業、飲食業、卸売業、電気通信工事業、IT事業など16業種のマニュアルが準備されています。

 ダウンロードすることで自動的に職業能力評価シートや必要な知識などの基礎的な要素を確認することができます。現在のところあらゆる派遣業種を網羅しているわけではない点は残念ですが、マニュアルの内容を基礎としてキャリアマップや教育訓練計画を作成する下地を入手することができます。

 参考までに、経理職のレベル1の職務能力評価シートの一部を抜粋すると、以下のようなイメージとなります。「Ⅰ職務遂行のための基準・共通能力ユニット」と「Ⅱ職務遂行のための基準・選択能力ユニット(経理)」に分けて、それぞれエクセルシートで「能力ユニット」「能力細目」「職務遂行のための基準」「自己評価」「上司評価」「コメント」欄のサンプルが構成されていますので、派遣先業務の実態に合わせて微修正することで、基本的にはそのまま評価シートとして活用できる完成度の高い内容です。

 また、派遣先業務の中にはいちがいにカテゴリーを分けることが難しいものや複合的な業務もありますが、あえて横断的に他の業種の評価シートを目にしていくことで、思わぬ発見があったり具体的な評価要素の構成の書きぶりが深化することもあります。自社の現状や問題意識に応じて、ぜひ有効に活用したいものです。

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キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアル


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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