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2022年6月28日

【ブック&コラム】『厚労省』

厚生系と労働系の官僚たちの実像

c2204_1.jpg著者・鈴木 穣
新潮社、定価902円(税込)


 新聞記者・論説委員として社会保障政策分野を長く担当してきた著者が厚労省という巨大組織の歴史と実像に迫る。

 他省庁と比較して特徴的なのは、まずその予算規模の大きさであった。年度予算は約33兆円で、国家予算の3割近くを扱っているという。専門職では、医師の資格を持つ医系技官、司法警察職員の権限を有する労働基準監督官と麻薬取締官の特異性を挙げる。また、国会答弁回数の多さも他省庁を圧倒し、本省職員約4000人の半分近くが過重労働の状態にある内情も明かされている。官僚たちの守備範囲は主に厚生系と労働系に分けられ、前者は多岐にわたるステークホルダーの間を自ら説明して回るのに対し、後者は時間をかけて公労使の調整を進めるという働き方の違いも紹介されている。

 二転三転してもめた「年金制度改革」「高プロ制度」の内幕ほか、審議会・部会・分科会の運営、政権与党への根回しに至る政策決定プロセスの機微や、行政遂行手段(法令・政令・省令・施行規則・通知・事務連絡)の効力など興味深いトピックも満載だ。


(久島豊樹/HRM Magazine より)

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