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2022年6月14日

【ブック&コラム】『偉人の年収』

生き方と報酬の関係を考える

c2203_1.jpg著者・堀江 宏樹
イースト・プレス、定価968円(税込)

 洋の東西と時間軸を横断して歴史的著名人たちの金銭事情を暴露したウンチク満載の企画本だ。紀元前のカエサルの大借金から岩崎弥太郎の大葬儀に至るまで、政治家・文豪・音楽家・戦国武将・明治の元勲らの収入と金づかいをハイテンポな筆致で概観している。

 各時代・社会の労働価値と物価の関係は現代と異なると前置きしつつも、逸話ごとに今の貨幣価値に換算して金額をはじき出す解説は大胆で面白い。十分な資産と仕送りを得て全く働く必要のなかったダーウィンと、10代の頃からじり貧の教師生活を続けざるをえなかったファーブルとの比較など、階級格差もよく描かれている。転職を機に富裕層へのし上がっていく人、家族の事情で資産を失う人、成り上がり者として罵倒される人、一般に知られている偉業とは無関係な副業を持っていた人など、人生模様は改めてバリエーション豊かで驚かされる。

 ただ、様々な生き方を並べてみると、人の幸福感は収入とは別のところにあるようにも思え、「報酬とは何か」という哲学的な命題も考えさせられる。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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