Q 紹介予定派遣で派遣労働者を直接雇用する場面で助成金を活用するには就業規則を整備しておく必要がありますが、どのような点に留意すべきでしょうか。
A キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、派遣先が派遣労働者を就業規則(労働協約)の規定に基づいて正規雇用または無期雇用(「有期→無期」は令和4年3月31日で廃止)に直接雇用して、6か月以上の期間継続雇用し、転換前の賃金より3%以上増額させるなどの要件を満たした場合に対象となります。この場合、派遣先が「派遣労働者を正規または無期雇用労働者として直接雇用する制度」を就業規則(労働協約)に規定していることが前提となります。
厚生労働省の「モデル就業規則」などにはこのような規定はないため、一般的な就業規則の場合は規定を創設する必要がありますが、具体的には、①試験等の手続き、②対象者の要件、③実施時期の3点を明記することが求められます。派遣労働者を直接雇用する場合は、要件については勤続年数や人事評価の結果などを設定することは現実的ではないため、「所属長の推薦」などによることになりますが、指揮命令者かその上司なのか実務的には明確になるようにしておく必要があるでしょう。
実施時期については派遣労働者の就業の実態から「随時」「毎月〇日」などとするのが一般的ですが、派遣の受け入れ期間の制限に抵触することもあることから、例外を認める旨の規定が望ましいです。条文は厚労省のリーフレットなどが参考にできますが、労働者からの申請や試験の実施、採用選考の実務などについては正社員転換制度規程の規定を準用する取り扱いが現実的かもしれません。
第〇条 会社は、派遣労働者本人が希望する場合は、第〇条に規定する正社員として採用することがある。
2 採用時期は、原則毎月1日とする。ただし、所属長が許可した場合はこの限りでない。
3 所属長の推薦がある者に対し、筆記試験および役員またはそれに準ずる者の面接試験を実施し、合格した場合について採用することとする。
4 試験の実施や採用選考の実務については、正社員転換制度規程の規定を準用する。
なお、令和4年10月1日以降は正社員の定義が変更され、「同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者」であることに加えて、「賞与または退職金制度かつ昇給が適用されている者」であることが求められることになります。この点も紹介予定派遣の活用や具体的な就業規則の適用にあたって実務上も大きな影響が生じると思いますので、今後は改正を見据えた対応が不可欠といえるでしょう。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)