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2022年3月17日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」114・令和4年3月2日公表版・労使協定イメージ

Q 派遣法についての労使協定(イメージ)の最新版が公表されたと聞きました。具体的にはどのような点が変更されているのでしょうか。

koiwa1.png 派遣労働者の待遇決定方式については労使協定方式と派遣先均等・均衡方式のいずれかを適用することになりますが、約9割が労使協定方式を選択しているといわれます。この場合の労使協定は派遣法で規定された項目や要件を網羅する必要があるため、作成・締結にあたって参照できるよう厚生労働省から「労働者派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定(イメージ)」が公表されています。令和2年12月4日公表版の更新として、令和4年3月2日公表版(2月2日公表版が一部修正)が示されました。

 新しいイメージでは全体に渡って加筆・修正された箇所が見られますが、キーワードは「追加の手当」です。2条(賃金の構成)に「〇〇手当」が追加され、4条2項で勤務評価の結果待遇を向上させる場合の「能力手当」が「追加の手当」に変更され、9条(賃金の決定に当たっての評価)の1項で「昇給」が「追加の手当」に変わり、3項が追加されて「〇〇手当」の例について記載されています。これらの点を見るだけでは些細な文言の変更や追加であり、あらためて労使協定イメージが更新された意図が分かりづらいですが、今回新設された9条3項に付された以下の補足を読むとその一端が理解できるかもしれません。

※法第30条の4第1項第3号については、派遣労働者の職務の内容、職務の成果、能力、経験等の向上を公正に評価しその結果を勘案した賃金を決定することを労使協定で定めることが要件であるため、一般的に職務の内容、職務の成果、能力、経験等に応じて支給されると考えられる職務の内容に密接に関連して支払われるものは全て労使協定に規定する必要があることに留意すること。また、第9条の記載ぶりのとおり、自社の就業規則等を準用することでも差し支えないが、当該就業規則等には法第30条の4第1項第3号における、派遣労働者の職務の内容、職務の成果、能力、経験等の向上を公正に評価することが具体的に定まっていることが必要となる。


 労使協定方式が適用される派遣労働者については、派遣法の要件にしたがって公正な評価に基づいて賃金を決定しなければなりませんが、この対象は基本給のみならずすべての手当があてはまるとされています(労使協定方式に関するQ&A第5集、問4-1)。実際の評価制度においては事実上基本給のみが評価対象とされていないかを問う確認の意味で、このような変更と補足が置かれたのではないかと思われます。派遣労働者に適用している手当がある場合は、労使協定方式のルールに照らした再点検が必要かもしれません。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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