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2022年1月27日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」107・傷病手当金の支給期間の通算化

Q 今年から健康保険の傷病手当金の支給期間の通算化が行われるようになったと聞きましたが、具体的な内容についてお教えください。

koiwa1.png 健康保険法の改正により、1月1日から傷病手当金の支給期間の通算化が行われることになりました。傷病手当金の支給期間は支給日から起算して1年6か月とされており、この期間内に労務不能の要件を満たさなくなったなどの理由で傷病手当金が支給されない期間があったとしても、物理的に1年6か月の期間が経過すると支給期間は終了しました。したがって、がん治療のように休職と復職を繰り返すような場合は、1年6か月という期間を待たずに治療やケアなどの途中で支給が終了するケースも少なからずありました。このような制度上の問題を修正すべく改正されたのが、今回の傷病手当金の支給期間の通算化です。

 今回の改正によって、同一の傷病についての傷病手当金は、支給開始日から通算して1年6か月に達する日まで対象となり、支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6か月を超えても、繰り越して受給することが可能となります。下の図を見ると分かりやすいですが、改正前は支給開始日から「起算して」1年6か月経過後は不支給となりましたから、出勤による不支給の期間が数か月に及んだり複数回を重ねた場合は、結果として数日しか傷病手当金が受けられないケースもありました。改正後は支給開始日から「通算して」1年6か月まで支給されますので、基本的には傷病が治癒するまでの間は通算1年6か月になるまで支給を受け続けることができます。

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(厚労省のリーフレットより)

 ただし、通算して1年6か月間支給されるのはあくまで同一の傷病についてに限られますので、医師の所見等に基づいて保険者が異なる傷病による労務不能と判断する場合は、別個の申請に基づいて傷病手当金が発生することになります。また、傷病名としては同一であっても、いったん治癒して完全に復職して一定の期間が経過した上で再発したような場合は、従前の傷病手当金とは別個のものと判断されることもあります。

 なお、この改正は2022年1月1日から施行されることから、2021年12月31日時点で、支給開始日から起算して1年6か月を経過していない傷病手当金が対象となります。具体的には、2021年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金がそれに該当します。同年7月1日以前に支給開始日がある傷病手当金は改正法による支給期間の通算の対象にはなりませんので、注意したいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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