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2022年1月13日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」105・雇用保険マルチジョブホルダー制度

Q 今年から雇用保険のマルチジョブホルダー制度がスタートすると聞きましたが、その内容についてお教えください。

koiwa1.png 今年の1月1日から65歳以上の人を対象に雇用保険マルチジョブホルダー制度がスタートしました。雇用保険制度は、昼間学生などの例外を除いて、①週の所定労働時間が20時間以上、②31日以上の雇用見込みがあることの2つの要件を満たす場合に適用されますが、あくまで「主たる事業場」での所定労働時間などで判断されるため、複数の事業所で勤務する人の所定労働時間が合算して要件を満たしても、雇用保険に加入することはできず、失業時などの給付を受けることはできません。

 定年後に再就職して就業しているケースが多い65歳の人たちは複数の事業所を掛け持ちで仕事をしていることも少なくありませんが、人生100年時代となり従来以上に高齢者の人たちが経済社会で活躍する場面が増えている中で、失業時の保障や働くモチベーションアップが求められることを受けて導入されました。「マルチジョブホルダー」とは聞き慣れない言葉ですが、読んで字のごとく、複数の仕事を持っている人のための雇用保険の制度だと考えてよいでしょう。

①複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
②2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
③2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること

 雇用保険マルチホルダー制度は、これらのすべてを満たすことが要件とされていますが、あくまで雇用保険の例外的な制度であるため、3つの要件を満たせば適用されるわけではなく、該当者本人が希望して手続きを行なった場合に「マルチ高年齢被保険者」となります。資格取得の手続きも、通常の雇用保険の手続きのように事業主が行うわけではなく該当者本人が行うため、事業所の管轄のハローワークではなく、本人の住所または居所を管轄するハローワークで行うことになります。

 具体的には「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」を本人が届け出ることになりますが、事業所番号、雇入年月日、雇用形態、1週間の所定労働時間などは事業主が記載することになり、賃金台帳、出勤簿、雇用契約書などの確認書類を添付することになるため、本人からの申し出があった場合は速やかに協力しなければなりません。マルチ高年齢被保険者の資格取得日は本人がハローワークに申し出した日となり遡及して取得することはできないため、十分に配慮することが必要です。資格取得の手続きが完了すると事業所に「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得確認通知書(事業主通知)」が届くため、事業主は本人の賃金から雇用保険料を徴収し、年度更新の際にマルチ高年齢被保険者の分も合わせて労働保険料を納付することになります。

 マルチジョブホルダー制度は労働者本人はもちろん事業者にとっても雇用の安定や働くモチベーションアップなどにつながるメリットがあるため、制度についてしっかりと理解して必要な社内周知などを行うとともに、手続きの申し出があったときには積極的に協力していきましょう。こうした制度が普及することで、定年を超えて働く人の経験や技能がますます現場で発揮される機会が増えることを期待したいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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