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2021年12月21日

【ブック&コラム】崩壊寸前?の「学歴フィルター」

 マイナビが「大東亜以下」という「学歴フィルター」と受け取られかねないメールを就活生に誤送信した問題は、その後も尾を引いている。「学歴不問を謳う企業が学歴フィルターを設けているのはけしからん」「就活生は現実を受け止めるべきだ」など、日本社会の建前と本音をめぐる"論争"に発展している。

c211221.JPG 仮に「学歴フィルター」が存在するとすれば、何故なのか。それは大学進学率の上昇と企業の終身雇用制という、日本独自の制度が定着しているからであろう。大学進学率は昭和30~40年代の高度成長期に急上昇し、その後も「いい大学」を目指して上がる一方。これに対して多くの企業は「うちの会社」人間になりそうな「人材」を採用し、長期にわたって戦力化する人事策を取っている。しかし、新人については「人材」を見抜く方法がないから、どうしても偏差値の高い大学が優先されてしまう。ある意味、わかりやすい。

 しかし、この「有名大学偏重」「偏差値偏重」のほころびが拡大膨張し、今や崩壊寸前まで来ているようだ。文書通信交通滞在費をめぐる実に簡単な改善策さえ実現できない国会議員。上に忖度して公文書改ざんを指示した財務省職員。長年の不正経理を見過ごし、会社分割に追い込まれた東芝の経営者......。それぞれに特有の事情があるにせよ、いずれも一流校を出たエリート集団なのに、社会人の基本ができていない非常識集団に成り果てているではないか。

 それでも、崩壊寸前とはいえ、長年にわたって続いてきた社会制度は容易に変わらないだろう。しかし、変化の雪崩現象が起きると、事態は一気に進み、気が付けば就活生を取り巻く評価基準はサマ変わりしている。そんなこともあり得ると思う。就活生は「学歴フィルター」に反応するヒマがあったら、自分の適性や将来ビジョンを描く努力をする方がよほど前向きで、生産的だ。(間)


2021年の【ブック&コラム】は今回が最終です。来年は1月4日に再開します。

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