衆院選が終わった。「与党は安泰」「野党は力不足」など、さまざまな評価が出ているが、ウツウツとした気分が抜けない。それは、低い投票率が今回も続いたこと。総務省によると55.93%で、前回より2ポイント余り上回ったものの、戦後3番目の低さだった。であれば、4回連続の50%台。4割強の有権者が棄権し続けているわけだ。
年代別などの詳細な結果は間もなくわかるだろうが、もし今回も10~20代の若者層の投票率が低かったとすれば、民主主義は「崩壊」に近づいているのではなかろうか。今回はテレビや新聞が若者に焦点を当てた特番を組み、若い芸能人たちも「私は投票に行く」と声を上げていたので、投票率は上がると思っていたが。
今回も、棄権する若者の多くが「投票しても現実は変わらない」「面倒なだけ」と政治不信を口にしていた。「若者より高齢者の方が絶対数が多いから」という"負け犬"のような理屈も散見される。それならば、これからも若者に冷たい政治が続くだけだ。親に多額の教育費を払ってもらった挙げ句、思ったような就職もできず、「こんなはずではなかった」「世の中が悪い」と落ち込むだけでは、社会はすぐに変わらない。
奇しくも開票日の夜、都内の京王線車内で通り魔事件が起きた。選挙と事件の間に直接の関わりはないが、8月の小田急線の類似事件と同様、「変わらない」社会に生きる若者の短絡的な発想に、現下の政治状況がリンクしているように思えるのはうがち過ぎか。「投票に行こう」と呼び掛けていた若者パワーが、社会の大きなうねりに結集するのはいつになるだろうか。半世紀前に「政治の季節」を体感した一人として、もどかしさが募る。(俊)