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2021年10月14日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」93・派遣事業の適正化のための自主点検表②

Q 「派遣事業の適正化のための自主点検表」をチェックする上でのポイントを教えてください。

koiwa1.png 前回(92回)も触れましたが、9月中旬からすべての派遣元事業所に届けられた「労働者派遣事業の適正化推進のための自主点検(セルフチェック)」は、各事業所で自主的に活用して改善などに取り組むことが求められます。32のチェック項目はいずれも派遣事業の運営状況をチェックする上で重要なものばかりですが、昨今の改正内容が関連した以下の項目などはとりわけ実務的なポイントだといえるでしょう。

(6)雇用安定措置の希望聴取
 雇用安定措置を講ずるに当たっては、特定有期雇用派遣労働者に対して、希望する雇用安定措置の内容を聴いていますか。
 ①聴いている ②ケースバイケースの対応としている ③聴いていない ④特定有期雇用派遣労働者はいない


 個人単位の期間制限に達する見込みの派遣労働者が引き続き就業することを希望する場合は雇用安定措置を講じる義務がありますが、令和3年4月施行の改正省令により派遣労働者本人の希望の聴取義務が課せられ、その結果は派遣元管理台帳に記載しなければなりません。派遣元管理台帳に該当する派遣労働者のすべてについて、希望聴取日時と聴取した内容について記載されているかどうか、あらためてチェックしましょう。

(19)雇用しようとする者への説明・明示
 派遣労働者として雇用しようとする労働者に、次のことを説明・明示していますか。
 ㋐派遣労働者であること ㋑賃金額の見込み ㋒労働・社会保険の資格取得 ㋓想定される就業時間・就業日・就業場所・派遣期間 ㋔教育訓練 ㋕福利厚生等 ㋖派遣会社の概要 ㋗労働者派遣制度の概要 ㋘段階的かつ体系的な教育訓練・キャリアコンサルティングの内容
 ①すべてについて書面の交付、ファクシミリ、メール(書面の交付等)により説明(㋐は明示)している
  ②賃金見込みは書面の交付等により、その他は口頭、ホームページにより説明(㋐は明示)している
 ③説明はすべて口頭又はホームページにより説明している
 ④実施していない 


 派遣労働者の待遇に関する事項の説明義務には、「待遇に関する事項等の説明(登録者等)」「雇い入れ時の待遇情報の説明」「派遣時の待遇情報の説明」「派遣労働者から求めがあった場合の説明」があります。このうち「待遇に関する事項等の説明(登録者等)」については令和3年1月施行の改正省令・派遣元指針改正により、「キャリアアップの教育訓練」と「キャリアコンサルティングの内容」の項目が追加されています。㋑賃金の見込みについては書面の交付等の方法に限られ、「③説明はすべて口頭又はホームページにより説明している」は明らかに改善が必要な例となりますので注意しましょう。

 自主点検表の点検・回答はチェックシートに記載した内容をフォームから送信することで数十分あれば実施することができますが、同時に上記のような項目について派遣元管理台帳や待遇に関する事項等の説明などが現場でどのように記載され運用されているかを実際にチェックすることもとても大切です。この場合は相応の時間と労力を要することになりますが、健全な派遣事業のこれからのさらなる飛躍のためにも、自主点検表をもとに派遣事業全般の運営状況を現場レベルで確認する機会に充てたいものですね。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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