「良いニュース」とは何か
著者・石戸 諭
光文社新書、定価946円(税込)
かつては新聞、テレビ、雑誌が独占していたニュースの発信媒体が、インターネットメディアの登場によって様変わりしつつある。新聞、雑誌は活字離れにより、テレビもネットの隆盛により、それぞれ衰退の道をたどっている。いずれも、若者層を中心にした新たな潮流である。では、「ニュースの未来」とはどのようなものか、本書の投じた一石が興味深い。
一口に「ニュース」と言っても、発信側と受け手側の意識には昔からかなりのズレがあったが、両者が一体となったネットメディアの出現によってフェイクニュースが生まれ、それが社会を動かす由々しき事態を生じさせている。「ニュースとは何か」という根源的な問題が、新旧メディアの共通課題として浮かび上がっているのが現代だ。
本書は「ノーベル文学賞作家とフェイクニュース」「インターネット時代のニュースとは何か」「"良いニュース"を創るために」など8章構成。著者は新聞記者としてニュースの基礎を体得した後、フリーランスとしてネットメディアに身を置いている。ネット時代における「良いニュース」として謎、驚き、批評、個性、思考という五つの要素を挙げているが、その内容と理由が本書の核心だ。
著者は「メディアが変わっても、ニュースには変わらない基本がある」として、「それに気づくことが良いニュースを生む」と主張する。それぞれのメディアでニュースに関わっている人はもちろん、決まったメディアのみを情報源とする受け手にも一読の価値がある。(本)