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2021年8月24日

【ブック&コラム】「当たり前」でなくなった民主主義

 横浜市長選で自民党系候補が惨敗して、さっそくメディアは「今秋の総裁選、衆院選への影響は必至」と騒いでいる。それはそれで当然だが、今回の投票率は49.05%の「高投票率」だったものの、それでも過半数の有権者は棄権した。7月に行われた東京都議選も42.39%の低水準。しかし、もう慣れっこになっているのか、メディアも注目しない。

c210824.jpg 東京オリンピックでは、ベラルーシの女子陸上選手がポーランドに亡命した。サッカーWCアジア予選に出たミャンマーの選手も日本に事実上亡命した。強権政治が選手にまで圧力をかけるベラルーシや軍事クーデターの起きたミャンマーでは、選手たちの言動は文字通り生命に関わる。それを感じさせる事件が目の前で起きたのだ。

 しかし、気が付けば、今や民主主義の国家・地域は世界の"少数派"になろうとしている。香港に対する締め付けを強化する中国、タリバンが武力統一したアフガニスタンなど、民主主義は次々と潰されている。旧ソ連が崩壊した1990年代初期、西側諸国が「民主主義の勝利」と浮かれたのがウソのような大変化だ。

 逆にみれば、自分の住む国や自治体の代表を自ら決められる選挙制度というものは、民主主義の根幹であることが改めてわかる。「政策効率が悪い」「反対意見は軽視される」といった批判は多々あるが、では、そうした批判もできず、個人が望むようには暮らせない専制国家の方がベターなのだろうか。現実に、日本もつい76年前までは似たような状況だった。今こそ、棄権という行為が民主主義の"自滅"につながることを再認識すべきではないだろうか。(典)

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