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2021年8月26日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」86・日雇い派遣の禁止の要件

Q 1日の所定労働時間7時間、週2日の雇用契約を結んで労働者派遣を行おうとしたところ、労働局から日雇い派遣禁止の要件に該当するとの指摘を受けました。どのように対応したらよいのでしょうか。

koiwa1.png 派遣法は、「30日以内の期間」を定めて雇用する労働契約を日雇いとみなして、そのような労働者を派遣社員として従事させる事を原則禁止しています(35条の3)。条文の文言上は、契約期間が31日以上の雇用契約を結べば日雇いには該当しないと読み取れそうですが、実際にはそうではありません。

 厚生労働省の平成24年改正Q&Aによると、「雇用期間が31日以上の労働契約を締結しているにもかかわらず、就労日数が1日しかない、あるいは契約期間中の初日と最終日しか就労日数がないといった場合は、明らかに『社会通念上妥当』と言えない」としています。また、「労働契約期間内の就労時間の合計を週単位に換算した場合に概ね20時間以上あるような場合には、雇用期間が31日以上の労働契約を締結することが『社会通念上妥当』と言える」という見解が示されています。
 この反対解釈から、派遣労働者は概ね週20時間以上は働いていることが必要であるとの結論が導かれ、ご質問のように、週の所定労働時間20時間に満たない場合は、労働局の指導対象となっています。一方で、日雇い派遣の禁止には2つの例外があります。

 1つ目は「適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認める業務」の場合であり、具体的には、ソフトウェア開発や機械設計、事務用機器操作などの業務が該当します(施行令4条)。こちらはかつての派遣法で「政令26業務」と呼ばれていたものが原型となっていますので、ご存じの方も多いでしょう。
 2つ目は「日雇い派遣の例外の場合」で、派遣労働者が次の要件に該当する場合です。こちらは生業収入、世帯収入の「500万円以上」が問題となるケースも多いので、どこかで耳に挟んだ人も少なくないと思います。

60歳以上
昼間の学生
副業(生業収入が500万円以上)
主たる生計者でない者で、世帯収入500万円以上

 これらの例外に該当する場合は、その旨を確認した書類等について、派遣元管理台帳の「備考」欄に記載しなければなりません。日雇いについては、やや特殊なルールがありますので、実務の現場ごとに必要な判断をしていくことになります。誤解や解釈の誤りが生じることのないよう、気をつけたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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