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2021年8月 5日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」83・テレワークの費用負担

Q 新型コロナウイルス感染症への対策もあって、テレワークを続けています。在宅勤務にあたっての費用負担については、どのように考えるべきですか。

koiwa1.png 新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって、テレワークを導入する企業が増えています。厚生労働省の「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」にも提出された「テレワークの労務管理等に関する実態調査」(2020年11月)では、全体で約35%の事業所が何らかの形でテレワークを実施・導入しています。この傾向はいわゆるコロナ禍に対処するための「新しい生活様式」の浸透によって高まったといわれていますが、テレワークの推進は働き方改革実行計画に基づく国策でもあるため、今後も長期的に増加していくことが期待されるでしょう。

 テレワークの導入・実施にあたっては、自宅などで就業する労働者の通信費、光熱費、パソコン機器などの経費が発生することから、それらの費用を会社が負担するのか、労働者が負担するのかという費用負担の問題が生じます。これらの費用を労使のいずれが負担するのかについては労働法に明確な規定はありませんが、就業規則について規定した労基法89条1項5号では「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項を就業規則に定めなければならない」と規定されていますので、労働者に負担させる場合は必ず就業規則にその旨の規定を置かなければなりません。ここで「作業用品その他」とあるのは、テレワークに伴う費用も含まれます。

 「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」(一般社団法人日本テレワーク協会)では、「Q2-7 テレワーク実施の際に要した通信費・水道光熱費などの費用は会社が負担すべきでしょうか?」の問いに対して、「テレワークに関わる費用負担区分については、テレワークを導入する前に、通信費・水道光熱費など負担について明確なルールをつくり、従業員に対して、丁寧に説明することが必要です」と回答され、費用負担のルールについて就業規則の変更が必要なほか、就業規則の作成義務がない会社では労使協定を結んだり、労働条件通知書で従業員に通知することが必要だとされています。

 費用負担の実態について、先ほど紹介した「テレワークの労務管理等に関する実態調査」の「テレワーク(在宅勤務)をする従業員に、会社が貸与または費用負担しているもの」では、以下のような結果が発表されています。

パソコン (74.4%)
パソコンの周辺機器 (55.7%)  
スマートフォン・携帯電話 (47.9%)  
インターネット接続のための通信機器 (25.3%)  
タブレット端末 (14%)  
インターネット通信回線の使用料 (9.0%)  
事務用品 (9.0%)  電話料金 (8.6%)  
一定額の手当を支給している (6.2%)                (以下略)

 これをみるかぎりでは、パソコンや周辺機器、スマートフォンやタブレット、通信機器などのハード面・固定費については会社側が負担し、通信使用料や電話料金、事務用品などのソフト面・変動費については労働者の負担する傾向が強いといえます。通信費や電気代、消耗品代などについては実際に利用した経費の金額を特定することが困難なケースが多いことから、多くの会社では現実的に労働者負担としているケースが多いようです。

 この場合は必ず就業規則などの根拠が必要となりますが、従来支給していた通勤手当などをテレワークを理由に支給しない場合などは不利益変更となる可能性もあることから、一日あたり〇〇円の「テレワーク手当」などを支給するなど、実費相当の手当などに置き換える方法が妥当なケースも多いといえるでしょう。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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