今の仕事と経営学の接点をガイド
著者・佐々木 圭吾
平凡社、定価968円(税込)
経営学と企業活動の接点を考察した1冊。中小企業で働く入社3年目のA君が大学研究室の教授に相談を持ちかける「対話編」と、該当テーマの学術的背景、今日的意味を整理する「解説編」のセットで、10章にわたる物語が展開される構成だ。
変化の激しい時代になぜ組織戦略は必要なのかというトピックに続けて、個人も戦略的目標を持つべきだと説く一方、その最大の障害は日常業務の負荷にあると、グレシャムの法則を引き合いに矛盾を指摘する。1+1が3以上になる組織の強みを巡っては、人間は助け合う動物だったと原始時代から説き起こし、テイラーやバーナードの学説を経て「協働意志」の確認に至る。さらに、モチベーションは"仕事の面白さ"にあると看破し、有意義性・自立性・フィードバック性の3要素に分解して高め方を探る。最終章では改めて経営学を学ぶ意味に立ち返り、目指す人材像に「自省的実践家」を挙げている。
全体に学術の側に寄せた記述だが、現場第一線の悩みどころにもよくかみ合い、学び直しの好奇心を触発されそう。
(久島豊樹/HRM Magazine より)