コラム記事一覧へ

2021年6月24日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」77・労働保険料等の特例猶予を受けた場合の申告

Q 昨年(令和2年度)に労働保険料の特例猶予を受けました。この場合は、今年(令和3年度)の保険料の申告はどうなりますか。

koiwa1.png 令和3年度の労働保険の年度更新の手続きは、7月12日までに行わなければなりません。新型コロナウイルス感染症の影響で保険料の納付が困難な場合は、要件を満たすことで猶予などが認められることがあります。納付すべき保険料のうち、①令和3年度の労働保険料等、②特例猶予の許可を受けた令和2年度の労働保険料等のいずれかによって、取扱いが異なります。

 ①令和3年度の労働保険料等は、令和3年度の年度更新期間中に納付すべき保険料等です。こちらはあくまで令和3年度に納付義務を負うものであるため、納付が困難な場合には「申請による換価の猶予」や「納付の猶予」を受けられることがあります。それに対して、②特例猶予の許可を受けた令和2年度の労働保険料等は、あくまで令和2年度の保険料等の納付が猶予されていたものですから、改めてそれらの猶予を受けることはできず、「職権による換価の猶予」が受けられることがあります。具体的な猶予等の可否については、以下のフローで理解することができます。c210624.png

 「申請による換価の猶予」は、(1)労働保険料等を⼀時に納付することにより事業の継続等を困難にするおそれがあると認められる、(2)労働保険料等の納付に誠実な意思を有すると認められる、(3)納付すべき労働保険料等の納期限から6か月以内に申請、(4)換価の猶予を受けようとする労働保険料等のほかに滞納または延滞金がない、のすべてに該当する必要があります。コロナの影響等によって事業に著しい損失を受け、納付すべき保険料等を一時に納付することができないという通常の「納付の猶予」の要件よりもさらにハードルが高くなっており、年度更新期間中(7月12日まで)の早い時期に所管の都道府県労働局に相談することが求められますので、十分に注意したいものです。

令和2年度に労働保険料等の特例猶予の許可を受けた事業主の皆様へ


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

PAGETOP