Q 厚生労働省から「自営型テレワーカーのためのハンドブック」が公開されたと聞きました。具体的にはどのような内容ですか。
A 長引くコロナ禍などの影響もあって、会社や組織に所属せずに自宅などで仕事をする働き方を選ぶ人も増えてきています。注文者から委託を受けて自宅や自宅に準じた場所で役務の提供などを行う就労のことを「自営型テレワーク」といいますが、注文者から発注を受ける個人事業主でありながら雇用主と会社員との関係に似ていることから、仕事の進め方や報酬の請求などをめぐってトラブルになることもあります。厚生労働省の「自営型テレワーカーのためのハンドブック」は、カラー刷でイラストや図表を多用して自営型テレワーカーの基礎知識について分かりやすく解説しているので、これから自営型テレワークを始める人や始めて間もない人にお勧めです。44ページに渡って、以下の構成でまとめられています。
第2章 自営型テレワークの仕事の流れ
第3章 キャリアデザインとスキルアップ
第4章 在宅和亜子さんのトラブル例と対応策
第5章 自営型テレワーク関連情報
リーフレットでは、働き方改革実行計画に基づくクラウドソーシングの増加などの実態を踏まえて、平成30年2月に「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」から改定された「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」について約10ページに渡って詳しく解説されているほか、自営型テレワーカーが事業主として用いる見積書や業務委託契約書、発注書、請求書などの書式例が示され、作成や活用にあたっての留意点が整理されていますので、実務上の心強い味方になると思います。
なかでも興味深いのが第4章の「在宅和亜子さんのトラブル事例と対応策」であり、在宅テレワーカーの「在宅和亜子」という親しみやすいキャラクターが登場して、4コマ漫画形式でよくあるトラブルの事例と現場における対応策について紹介しています。業務提供誘引販売取引、報酬の支払い時期といった自営型テレワークをめぐるコンプライアンスや、心身の健康管理、ビジネスマナーなど、どこでも起こりそうな事例を中心に実務上の注意点とワンポイントアドバイスがコンパクトにまとめられていますので、参考にしたいものです。
事例では交通費や通信費、記録メディアなどの経費を注文者とテレワーカーのいずれが負担するかという論点も紹介されていますが、これらの経費負担は雇用契約とは異なり業務委託契約書や発注書などの取り決めによるため、負担のルールや支払条件などをめぐってトラブルになることも少なくありません。リーフレットでまとめられているガイドラインの内容などを参照して、しっかり取り扱いを確認したいものです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)