Q 厚生労働省の履歴書の様式が変更され、性別記載欄が廃止されたと聞きました。具体的にはどのような内容ですか。
A 履歴書は、就職や転職にあたって企業側が求職者の情報について最初に目にする「顔」であるため、どのような様式や内容で活用するかはとても重要です。公正な採用選考を確保する観点から、厚生労働省では従来JIS規格(一般財団法人日本規格協会)の履歴書様式例の使用を推奨してきましたが、令和2年7月にJIS規格の様式例が廃止されたため、令和3年4月16日に新たに様式例を公表しました。従来のJIS規格様式例との変更点は以下の通りです。
②「通勤時間」「扶養家族数」「配偶者」「配偶者の扶養義務」の項目を廃止。
性別を任意記載とする変更は、LGBTなどの性的少数者の支援団体などが性別欄の削除を国に要望したことでJIS規格が令和2年7月に様式例を廃止したことを受けて、新たに盛り込まれることになりました。性別記載欄が廃止されたわけではなく、「※性別」と表記された任意記載欄が設けられ、様式の下部に「※『性別』欄:記載は任意です。未記載とすることも可能です」と付記されています。性自認の多様な在り方に対応するため任意記載欄となったため、求職者が記載を希望しない場合は未記載となる場合があります。
具体的には性別を記載するケースが多いと考えられますが、性別の把握が必要な場合に面接などで適切な方法により本人に確認することは可能です。女性活躍推進法の規定によって男女の応募者数を把握したり、男女雇用機会均等法の規定によって女性が相当程度少ない会社で女性を積極的に採用する必要がある場合などがそれに該当します。求職者の中には性別を記載したり、面接時などに述べることを望まない人もいるため、性別の確認が必要な場合には理由を説明し、回答を強要することのないようご配慮することが大切です。
通勤時間や扶養家族数(扶養義務)などの欄は特に求職者のプライバシーの要素が高い情報であることから、項目欄から削除されました。これらの情報について雇用管理上などの理由から把握する必要がある場合は、公正な採用選考に留意した上で、面接時などに本人の自由意志のもとに確認することになります。超過勤務や休日出勤の必要がある場合に、それらへの対応の可能性や本人の希望などを尋ねることなどが考えられますが、このような質問はあらかじめ求人票や募集要領などに情報を記載し、面接者全員に対して行うことが求められる点には注意したいものです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)