定年退職は怖くない?
著者・髙橋 秀実
ポプラ社、定価1056円(税込)
会社員生活を引退した複数のシニア(男女)たちへのインタビューを通して「定年」の実相を探っていく1冊。著者は"定年のない"フリーのノンフィクション作家で、対照的な立場を振り返る心境の吐露も面白い。
本書に登場するシニアの皆さんは独特のエッジが立っている。「退職したら血圧が下がった」と嬉々と語るその人が、1週間もブラブラしていると罪悪感のような気持ちを覚えるからと自力で再就職先を見つけていた。仕事はせず、図書館・ファミレスに居座る人。積極的に陶芸・カメラ・釣り・ゴルフと趣味を極める人。カルチャーセンターに通い、60歳を過ぎて突然人生が開けた人も。再雇用を選択せずきっぱり退職した女性は「金銭面でのシミュレーションをしたうえで大丈夫だと思えたから」と決断。元数学教師の男性は「定年直後が資産のピーク」と試算し、65歳で施設入居を決めている(80歳では資金不足で入居できないと確信)。
国や企業が進める「定年延長」とは別次元で、個々の人生を各自が引き受ける"覚悟"が伝わってくる。
(久島豊樹/HRM Magazine より)