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2021年5月20日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」72・令和3年の派遣事業報告書②

Q 令和3年度の派遣事業報告書の「別紙様式」を作成する上での注意点を教えてください。

koiwa1.png 令和3年度の派遣事業報告書の「別紙様式」(「労使協定方式における現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う労働市場への影響等を踏まえた取扱いに関する提出様式(令和3年度及び令和4年度共通様式)」は、令和3年度に一般賃金の「例外的取扱い」を適用する場合に提出します。あくまで「例外的取扱い」を適用する場合の様式であり、労使協定方式を採用していても「例外的取扱い」を適用しない場合は提出する必要はありません。また、令和4年度の記載項目もありますが、もちろん令和4年度に「例外的取扱い」が適用できるという意味ではありません。様式は9面から構成されていますが、令和3年度に記載するのは第1面から第5面であり、第6面から第9面は令和4年度に令和3年度の実績を記載することになります。

 一つ目のポイントは、第2面の「1派遣労働者の雇用維持・確保を図るために講じる対応策」です。コロナの感染拡大の影響等を踏まえた派遣労働者の雇用維持・確保等の対応策を文章で記載しなければなりません。具体的には、「派遣労働者に新たな就業先を提供」「一時的な休業を実施」「テレワークの実施」「教育訓練を実施」などが挙げられると思います。文章は箇条書きでも構いませんが、対象者の見込み人数などを具体的に記載すると分かりやすいでしょう。

 もう一つは、第4面の「3例外的取扱いが適用される協定対象派遣労働者数等(令和3年6月1日現在の状況)」です。例外的取扱いが適用される業務ごとに派遣労働者数を記載します。例外的取扱いを適用する業務についてのみ記載し、それ以外は空欄で構いませんが、例外的取扱いを適用する業務が1つもない場合は、そもそも別紙様式自体を提出する必要はありません。具体的には、①例外的取扱いの適用の有無、②協定対象派遣労働者数、③うち無期雇用派遣労働者(④例外的取扱いの影響を受けた人数)、⑤うち有期雇用派遣労働者(⑥例外的取扱いの影響を受けた人数)となります。
 
 ④と⑥には、「例外的取扱いの影響を受けた協定対象派遣労働者数」を記載します。具体的には、令和3年度の一般賃金の水準に満たない者の実人数のことを指しますが、原則の令和3年度の一般賃金が適用されていたならば、その水準よりも下回っていた人数を記載することになります。例えば、令和2年度の一般賃金が1000円、令和3年度の一般賃金が1050円の業務の場合、1050円未満の実人数を記載します。

 なお、賃金額は実際に個々の派遣労働者に支給された額とは限らず、労使協定において「賞与・手当等」の水準を「平均額」(直近事業年度、見込み額、標準額など)と規定している場合には、令和3年度の労使協定に記載された「賞与・手当等の平均額」が適用されることになります。この点はやや分かりづらいと思いますので、混乱することのないように十分な準備を怠らないようにしたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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