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2021年4月27日

【ブック&コラム】『「失敗」の日本史』

歴史に「物語」を取り戻す!?

c210427.png著者・本郷 和人
中公新書ラクレ、定価968円(税込)


 歴史の真の面白さは、勝者の歴史よりも敗者の歴史を知ることにある。本書もそんな1冊で、「歴史に"もしも"はない」という常識からしばし離れ、敗者となった原因や時代背景を探り、「歴史学を唯物史観から解放する」「歴史に物語を取り戻す」と豪語する。日本史ブームの中、果たして狙いは成功したか。

 本書では鎌倉時代の源義経や後鳥羽上皇に始まり、室町時代の後醍醐天皇、戦国時代の今川義元など、歴史でおなじみの「失敗人」にはじまり、源頼朝、北条氏政、伊達政宗など、一応は「成功人」と思える人物の中にも失敗の種を探っている。その数、27人。

 歴史好きならだれもが知る人物やエピソードも多いが、室町の斯波義将や畠山持国、戦国の京極高次といった、日本史上は"二軍"クラスの人物も取り上げている。ブームの火付け役ともいえる著者の語り口は軽妙で、気軽に楽しく読める。

 それにしても、「敗者列伝」(伊東潤)、「失敗の本質」(戸部良一等)など、過去から近代に至るまで、日本の「失敗史」を研究・分析した書籍が山のように出回っているのに、現代の我々がどこまで生きた教訓としているのか、新型コロナ対策だけみても実に心もとない。それはともかく、今年の大型連休も、東京や大阪などの都市部は緊急事態宣言下の"巣ごもり連休"を余儀なくされそうだ。そんな時、この種の歴史ものに親しむのも悪くない。(本)

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