コロナ禍のため、あまり世の注目を集めていないが、4月から高齢社員の70歳までの雇用が企業の努力義務となった。少子高齢化が進む中で、働く意欲のある高齢者が活躍できる環境整備を目的にしたもの、というのが建て前だ。しかし、どこか引っ掛かるものを感じる。
新制度では従来の「65歳雇用」義務を70歳まで延長したが、延長分は努力義務だから企業が違反しても罰則はない。また、今回は「企業が自ら実施する社会貢献事業」と「企業が委託、出資する団体の社会貢献事業」が加わった。「創業等支援措置」と呼ぶそうだが、この部分が取って付けたようで、どうにも違和感がぬぐえないのだ。
この「社会貢献事業」とは一体、何なのか。漠然として、さっぱりわからない。そもそも、企業自体が営利活動を通じて社会貢献事業をしている組織と考えることもできるが、それ以外に「社会貢献」している組織のある企業といえば、せいぜい大企業だけだろう。では、世間一般的なイメージに沿って「社会貢献事業」=「ボランティア活動」とみなせば、給料なんかもらえるのだろうか。
そんなあやふやな規定が加わったことについて、高齢者側も考えてみるべきだ。人生の後半に社会貢献活動に身を投じるかどうかなんて、政府や企業に言われて決めるべきものだろうか。そもそも、65歳以降も働くのか、それとも遊ぶのか、自分自身の境遇と人生経験を踏まえて決めるべきものではないのか。一生、会社に寄り掛かった人生を送るのも一つの考えだろうが、新制度に対して「余計なお世話」と思うぐらいでなければ、生涯現役など夢のまた夢。これ、間違いないですよ。(俊)