Q 派遣法の労使協定方式の過半数代表者選出について、具体的にどのような点に注意すべきですか。
A 令和3年度の局長通達と同時に公開された「労使協定方式に関するQ&A【第3集】」では、労使協定の過半数代表者の選出手続きについて触れられています。
答 過半数代表者の選出には、労働者の過半数が選任を支持していることが明確になるような民主的な手続を経ることが必要である。最終的には個別の事例ごとに判断されるものであるが、一般的には、お尋ねのような取扱いは、労働者の過半数が選任を支持していることが必ずしも明確にならないものと考えられる。例えば、返信がなかった労働者について、電話や訪問等により、直接意見を確認する等の措置を講じるべきである。なお、イントラネット等を用いて、労働者の意思の確認を行う場合も同様である。
選出手続きにあたって、「メールに対する返信のない者を、メールの内容について信任(賛成)したものとみなす取扱い」については、「労働者の過半数が選任を支持していることが必ずしも明確にならないものと考えられる」とされています。メールの開封者やイントラネットなどの閲覧者を確認できる場合についても同様であり(問1-10)、これらの点は従来からの事実上の取り扱いが行政解釈として明確にされています。
「返信がなかった労働者について、電話や訪問等により、直接意見を確認する等の措置を講じるべきである」とされていますが、この点は労働基準法の過半数代表者の選出手続きにはみられないものであり、間接雇用である労働者派遣に特有の現実を反映しているといえます。リーフレット「過半数代表者の適切な選出手続きを~選出するにあたっての5つのポイントをご紹介します~」でも、メールなどで労働者の意向を確認する場合について、「メールなどで労働者の意向を確認する場合には、意思の確認に特に注意が必要です」で同様の注意喚起が促されています。
過半数代表者選出にあたって投票を実施する場合には、できるかぎり労働者の意思を集約できるような仕組みを目指し、少なくとも未返信の者について賛成とみなす対応は取るべきではないでしょう。昨年の「労働者派遣制度に関する議論の中間整理」では、法違反について厳しい行政指導や指導監督を行っていくという方針が示されていますが、労使協定の労働者代表の選出についてもコンプライアンス上の大きなテーマです。基本事項であるがゆえにいま一度原点に立ちかえって徹底していきたいものです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)