Q 令和3年は派遣法の省令や指針が大幅に改正されると聞きました。そのうち、派遣労働者の雇い入れ時の説明の義務付けについて、実務上のポイントを教えてください。
A 今年は派遣法の省令・指針が改正され、雇用安定措置の派遣労働者からの希望聴取、マージン率等のインターネットにおける公開、教育訓練等の内容の雇い入れ時の説明義務などが続々とスタートします。そのうち1月に施行されたのは、以下の内容です。
・派遣労働者の雇い入れ時の説明の義務付け
・労働者派遣契約に係る事項の電磁的記録による作成
・派遣先の労働関係法令上の義務に関する苦情について誠実かつ主体的に対応
・日雇い派遣労働者の派遣契約解除時の派遣元の責任の明確化
派遣労働者の待遇に関する事項の説明義務については、①待遇に関する事項等の説明(登録者等)、②雇い入れ時の待遇情報の説明、③派遣時の待遇情報の説明、④派遣労働者から求めがあった場合の説明が課せられていますが、1月からの改正では、「キャリアアップの教育訓練」と「キャリアコンサルティングの内容」が、①に追加されました。
①待遇に関する事項等の説明(登録者等) | ②雇い入れ時の待遇情報の説明 | ③派遣時の待遇情報の説明 |
派遣労働者として雇用した場合の賃金見込み額 想定される就業条件等について 労働・社会保険の加入について 事業運営に関する事項 労働者派遣制度の概要 キャリアアップの教育訓練(新設) キャリアコンサルティングの内容(新設) |
昇給の有無 退職手当の有無 賞与の有無 労使協定の対象となる派遣労働者であるか否か(対象である場合は労使協定の有効期間の終期) 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項 |
賃金(退職手当および臨時に支払われる賃金を除く)の決定等に関する事項 休暇に関する事項 昇給の有無 退職手当の有無 賞与の有無 労使協定の対象となる労使協定の有効期間の終期 |
待遇に関する事項等の説明のうち派遣労働者の賃金の見込み額、労働・社会保険の加入などの待遇に関する事項は必ず書面の交付などで行わなければなりませんが、実際には一枚の様式にまとめて交付している例が多いようです。キャリアアップの教育訓練は個別の事情にも左右されるため網羅して記載するのが難しいことから、会社パンフレットなどを参照に説明する方法も考えられるでしょう。労働局などから公開されている各種の様式例を参照にしつつ、項目を追加してキャリアアップの教育訓練やキャリアコンサルティングの内容の項目を追加して対応したいものです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)