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2021年1月28日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」56・令和2年12月4日版労使協定イメージ②

Q 労使協定イメージ令和2年12月4日公表版では、令和3年度の例外的取扱いについての記載例が示されています。具体的にはどのような点に注意すべきでしょうか。

koiwa1.png 「労働者派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定(イメージ)・令和2年12月4日公表版」では、令和3年度の局長通達に示された例外的取扱いに対応するための【通達の第1の5「現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う労働市場への影響等を踏まえた取扱い」の記載例】が示されています。具体的には、第3条(賃金の決定方法)、第4条、第12条(その他)の条項がそれに該当します。

 令和3年度の局長通達の例外的取扱いの要件を満たす場合は、令和2年度の一般賃金の水準に据え置くことができますが、その旨を労使協定に記載しなければなりません。同イメージでは、第3条の(一)で令和3年度の一般賃金を適用するという原則を示した上で、(二)で特定の職種・地域について例外的取扱いとして、令和2年度の一般賃金を適用するとしています。(三)では例外的取扱いを適用するにあたって判断すべき指標が挙げられていますので、この記載の流れはそのまま具体的に労使協定に落とし込むことができるでしょう。

 実務的にもっとも重要なのは、令和3年度の一般賃金を適用する原則パターンと、令和2年度の一般賃金に据え置くパターンの賃金表(基準値及び基準値に能力・経験調整指数を乗じた値)それぞれ比較対照できるように具体的に示すことです。別表1-1では令和3年度の一般賃金の原則パターン、別表1-2では令和2年度の一般賃金への据え置きのパターンのサンプルが示されていますので、適用する職種ごとに地域指数を用いて具体的に表を作成しておく必要があります。

 別表作成の注意点としては、職種単位で作成することはもちろんですが、適用している具体的な統計名(賃金構造基本統計、職業安定業務統計の別、統計年度)を示し、通勤手当分は地域調整額とは別に記載することが必要となります。エクセルなどで作成する例が多いと思いますが、適用職種が多い場合はかなりのボリュームとなりますので、適用数値が抜けたり、対応関係に矛盾が起こらないように細心の注意を払いましょう。

 第3条では「ただし、このうち短時間又は有期雇用である対象従業員については、正社員との間で不合理な待遇差が生じることとならないよう留意するものとする」という文言が記載されていますが、これは派遣法ではなくパート・有期労働法で示される直接雇用の正規雇用・非正規用間の同一労働同一賃金のことを示しています。典型的には、休職制度や慶弔休暇などにおいて不合理な待遇差が起こらないように合わせて十分に注意したいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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